CSRでワークライフブレンドを実現!
働く女性たちに先輩ワーキングウーマンの成功体験や失敗談からキャリアの築き方を学んで欲しいとの狙いで先月からスタートしたキャリアカフェ。水曜日の夕暮れ時、銀座のとあるスペースの一角に30代を中心とした女性たち(複数の男性の姿も)が集まりました。数年前に女性のキャリアを考えるワークショップを通じて知己を得た松信章子さんを中心に企画されたもので、私も第2回目のカフェにお邪魔してみました。
この日の講師は、(株)電通 IMCプランニング・センター ソーシャル・マーケティング部プランニング・ディレクターの白土真由美さん。圧倒的男性優位の大企業で、20代は外資系クライアントを担当する営業としてがむしゃらに走り、30代ではコンベンションのプロデュースといった広告代理店での一通りの業務を経験したものの、「何のために仕事をするのか」という自分の存在価値を求めて悶々とする日々が続いたそうです。そんな中、白土さんは「今の仕事を通じて、生活者も、クライアントも、勤務先も、さらには社会全体もハッピーにできないものか」というアプローチを共有する有志と自主的チームを組織。不特定多数が利用する民間施設への補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬*)ユーザーの障害者受け容れを促進する「障害者補助犬法」の施行を契機に、その理解啓発を促す「ウエルカムほじょ犬」キャンペーンなど、社会性の高いプロジェクトを次々と手掛けていきます。*車いすを使う障害者を補助する犬
さらに、次に出会った持続可能な社会を目指すCSRという概念が、その後の彼女の仕事人生を変えることになります。
カフェの様子
CSR事業活動のプロデュースやコミュニケーション戦略を、クライアントへの提案に自主的に組み込むようになった白土さん。当初は、社内よりもむしろクライアントからの評価が高かったそうです。その後、白土さんのお仕事はチームワークに広がり、さらには大きな社会潮流を背景に時代の追い風を受け、昨年7月には「ソーシャル・マーケティング部」という電通の新たな組織体として結実しました。白土さんご自身は、選りすぐりのメンバー約20名にディレクションを与える立場に。自主ベースで取り組んでいた時代には考えられなかった組織のダイナミズムによってさらに成長するプロジェクトに、日々感動しているのだそうです。
仕事に行き詰まりを感じた時、組織人としての自分の行動と社会人としての自分の考え方が重なり合う部分(白土さんは「のりしろ」という言葉を使われていました)を広げるよう努めてみる。「のりしろを広げるためには、現在携っている仕事を通じて、環境や社会問題の解決に貢献するために、何かできることがあるだろうか?と自問し続けることが重要なのではないでしょうか」と白土さんは言います。白土さんの”のりしろ理論”は、地球環境や人間の健康に配慮した価値観に沿って仕事と生活を限りなく近づけるという、私の唱えるワークライフブレンドとも相通じます。
白土さんによると、CSRとは法令遵守や事業との関連性の薄い慈善行動だけでは不十分。企業にとって必然性のある戦略的領域で納得できる事実を積み上げていくことや、こうした活動を効果的にコミュニケーションすることこそが、企業価値を向上させるとのことです。その戦略的領域を意識しながら、個々人は何をなし得るかを考えることこそが、組織人としてののりしろを広げることに他ならないというお言葉は、社内で誰よりもCSRに懸けてきたという自負をお持ちであろう白土さんらしい考え方だと思いました。
WLブレンドは、組織を辞めて独立することによってしか実現できない訳では決してない。どのような企業、どのような業務に就いていても、環境や社会問題の解決に貢献するために何をやるべきかを考えることは必ずできるのです。白土さんのお話は、あえて一つの企業にこだわりながら、そこを舞台に自らの価値観を組織と融合させてゆく可能性とその大切さを改めて教えてくれます。
おまけ;この日は「ショッピング募金で社会貢献」で取り上げたイーココロを運営する(株)ダビンチの関根健次社長が会場に来ていました。いずれお目にかかりたいと考えていた方だったのでびっくり!またしても、偶然で素敵なご縁をいただきました。