京都議定書 ツケは誰に

京都議定書 ツケは誰に

京都議定書 ツケは誰に

 オルタナの最新4号が発刊しました!メイン特集のタイトルは「京都議定書 ツケは誰に」。今回の取材を通じて一番感じたのは、議定書の目標達成のために膨大なCO2排出権を国や企業が買わなければならなくなることに対して、危機感があまりにも弱いことです。国が買うというのは私たちの税金によってですし、企業が買うというのは株主や消費者の利益を損なうかもしれない、にもかかわらずです。
去る9月22日、長年にわたって温暖化問題に取り組む気候ネットワーク主催のシンポジウム「どのような政策で6%削減を達成するか ~どうする京都議定書の目標達成~」が開かれ、3連休初日にもかかわらず多くの人たちが詰めかけました。
070922_1427~001.jpg

気候ネットワーク代表の浅岡美恵さん


シンポジストとして、政府からは環境省と経済産業省の担当トップが、民間からは東京電力と松下電器産業の環境担当の方々が出席されました。
070922_1517~001.jpg

シンポジストたち写真
日本のCO2排出量全体の約3割を占める電力業界は、京都議定書の目標達成の一環として、CO2排出原単位(1キロワット時の電気を使う時に生じるCO2の量)を20%低下させるという自主的な目標を掲げて取り組んでいます。東京電力環境部長の影山嘉宏さんによると、現時点では原単位改善は11%にとどまるため、残り9%を何とかするためにいくつかの方策を打たなければなりません。
影山さんによると、まずは原子力発電所の稼働率を上げることによって2、3%分をまかなう。次に、火力発電所の効率改善(石炭火力ではなく、LNG火力の稼働率を増やすなど)によって1%。残りの5、6%は海外から排出権を買って何とかする、ということです。5、6%というのはCO2トン数にすると7000万ー1億トン。 電力業界は議定書の約束期間(2008年ー12年の5年間)に7000万トンの排出権購入契約を結んでいるので、厳しいけれども何とかなるだろうと読んでいるのです。
しかし、本当にそんなにうまくいくのでしょうか。
東電は7月の新潟県中越沖地震の影響で停止した柏崎刈羽原発の早期運転再開を目指していますが、めどはたっていません。今回の地震で露呈した原発の耐震不足に関して全国的に調査することになれば、他の原発も点検のために止めなければならなくなるかもしれません。原発の稼働率を上げるというのは、現実的にはとても困難な条件が待ち受けています。
原発の稼働率を上げられなければその分、排出権の購入量が増えるでしょう。しかし、京都議定書では、海外などからの排出権購入は国内で温室効果ガスの排出量を削減する対策を「補完するもの」と位置づけられています。あくまで「補う」もの。際限なく排出権を購入することで排出量を削減したことにするのは、オルタナの記事でも書きましたがまさに「主客転倒」なのです。
とはいえ、電力会社だけを悪者にしても始まりません。電力会社は私たちの暮らしを根元から支えている存在。低炭素社会に対応できるビジネスモデルを電力会社にとってもらえるよう、私たち利用者も積極的に提案するべき時に来ているのではないでしょうか。
以前に住んでいたドイツのミュンヘンでは、通常のキロワット時当たりの電力料金にコンマ数セント上乗せした料金を支払うと、自然エネルギー(水力か風力か太陽光)による電力が届くというメニューを利用していました。物理的に自然エネルギーが送られてくる訳ではありませんでしたが、上乗せ分が自然エネルギーの発電施設への投資に充てられ、毎年の投資状況も公開されていました。少々料金が高くなってもこういう制度を認めるかどうか?。私たち消費者もいよいよ選択を迫られるのだと思います。

ページトップへ