正論だけど… ★★★「環境にやさしいのはだれ?―日本とドイツの比較―」(カール・ハインツ・フォイアヘアド、中野加都子著)

正論だけど… ★★★「環境にやさしいのはだれ?―日本とドイツの比較―」(カール・ハインツ・フォイアヘアド、中野加都子著)

正論だけど… ★★★「環境にやさしいのはだれ?―日本とドイツの比較―」(カール・ハインツ・フォイアヘアド、中野加都子著)

 期間限定で1時間以上の通勤を余儀なくされている事情で、ここ数年ずっと読めなくて気になっていた日本語の本を立て続けに読んでます。今後、気の向くままに書評していきたいと思っています。
 で、タイトルに引かれて読んでみたのがこれ。私もミュンヘンで暮らしながら、この本の著者と同じようにドイツを環境先進国として持ち上げがちな日本の風潮がどうも気になっていたからです。
 

環境にやさしいのはだれ?―日本とドイツの比較 環境にやさしいのはだれ?―日本とドイツの比較
カールハインツ フォイヤヘアト、中野 加都子 他 (2005/12)
技報堂出版

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 この本の特徴は、自然観から生活慣習、個別の環境政策に至るまで日本とドイツの違いを細かく列挙していること。その上で、四つ角にコンビニがあって、年中無休が当たり前に向かいつつあるような”モーレツな国”が、24時間営業のコンビニがなく、日曜日は店がしっかり閉まるような”おっとりした国”と同じ制度を導入しても無理ですよ、と主張します。
 その通り!そのような国の、しかも人口3万人ぐらいの小さな都市の先進事例を取り上げて「これを取り入れるべし」と言うのは、甚だ無理があると感じていました。環境対策で言えば、ドイツは不要なものをなるべく世の中に出さない「入口対策」なのに対して、日本は世の中に出てしまったものをどうやって処理するかという「出口対策」に終始している、という指摘も的確です。世界最高水準と言ってもいい便利さを追求するのをあきらめないで、安心や安全な暮らしを同時に実現しようとする日本の風潮に釘をさしている点については、拍手喝采したくなります。
 
 でも「ではどうすべきか」という点に踏み込むべき時になると、この本はいつも「日本でも今後、地形、歴史、産業、生活状況、価値観、文化などをセットにして、オリジナルな対策を追求すべきだ」と結んでしまうのです。ごもっとも、正論だと思います。が、読んだとたんに「はあ~」と力が抜けてしまうのです。この本のテーマとして取り上げるべきは、まさに「ではどうすべきか」という問いへの示唆であるはず。間違ったことを煽動するのはもっての他ですけれども、正論の”言い捨て”というのもこれまた無責任ではないかと思うのです。
 環境問題に関心があるけれども、ドイツという国には行ったことがなくて「本当にドイツって環境先進国なの?」という疑問をお持ちの方には、事実関係を知るのに役立つ本です。ただし、一度でもドイツに暮らしたことのある人にとっては、知っていることのほうが多く書かれている本だと感じられることでしょう。私にとっては、正論をはいて終わりではなく、正論をカタチにするフットワークを肝に銘じなければ、と気を引き締められた一冊でした。という訳で、★3つ。

2 件のコメント

  • makiさん、お久しぶりです!
    私もこの本、読んでみたくなりました。正論で具体例を挙げずに、えらそうに締めくくる、、、ドイツ人エリート(?)の典型ですね。。。
    ところで、ドイツもだいぶおっとり国ではなくなってきてます。日曜開店もありと、毎週ではありませんがお店が開くようになりました。土曜だって数年前までどこもしまっていたのに、今では殆どのお店が開いてますよね。それも22時まで開店、、、とか時間の長さ、便利さを売りにしている傾向も出てきています。日本の便利さが大好きな主人なんかは、喜んでいますが。ドイツ人全体も以前に比べて、休みの日の開店にうるさく言う人が減っている感じがします。ドイツもかなり急速に変わってきてますよ。

  • mikiさん、こんにちは! Froeliche Weinachten!
    >ところで、ドイツもだいぶおっとり国ではなくなってきてます。日曜開店もありと、毎週ではありませんがお店が開くようになりました。>
    確かに。ミュンヘンではまだまだだけど、フランクフルトあたりでは日曜営業を定期的にやっているのがニュースになってましたよね。一度やりだすとなし崩しになると労組は抵抗していますが、これも運用次第ではないかと。ドイツはこのままだと色々な面で”ジリ貧”なので、変わっていくのは必然だと思います。
    「便利の国ニッポン」に一時帰国なさる時には、ぜひお知らせ下さいね!

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