不特定多数無限大が紡ぐオルタナティブ ★★★★★「ウェブ進化論」(梅田望夫著)

不特定多数無限大が紡ぐオルタナティブ ★★★★★「ウェブ進化論」(梅田望夫著)

不特定多数無限大が紡ぐオルタナティブ ★★★★★「ウェブ進化論」(梅田望夫著)

 これは良かった。某IT後進国での3年間の生活(いまだにISDNがあるのには驚きました)ですっかりITオンチになってしまった私にとっては、日本で社会復帰するに当たって、しかも新しいメディアである「ヒトと社会と環境を大事するビジネス情報誌 オルタナ」を立ち上げる上で大変勉強になりました。
 ブログWeb2.0ロングテールといったウェブ社会での新しい現象には、「不特定多数」の参加によって新しい富や社会的価値が「無限大」にもたらされる可能性がある。さらに、ウェブ社会の未来を正しく切り開くには、この「不特定多数無限大」というあり方を信頼できるかどうかがカギとなる―。この本のテーマは、この2点にほぼ尽きると思います。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫 (2006/02/07)
筑摩書房

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 確かに、カネも地盤も看板もない人でも、やる気さえあれば発信できるようになったのは、web2.0のお陰に他なりません。私もweb2.0の恩恵を十二分に享受している側なので、不特定多数無限大の発想には無条件で応援したくなります。
 1つだけ気になったのは、こちらのブログの「ブログと専門性」というエントリーを引用しながら、「『ふーん、そうだよねー』的な連帯が、一〇〇〇万人の総表現社会参加者層で生まれることこそが、全く新しい可能性なのだと思う」(149―150ページ)というくだり。「ふ~ん、そうだよね」だけで連帯って生まれるものなのでしょうか。ネット社会の中で”神の見えざる手”に任せるだけというのは、実社会同様に危ないのかもしれない。結局何も変わらない、という”危うさ”を抱えているということを常に意識しておかないと、とも思うのです。私にはまだオプティミズム(楽観すること)が足らないようです。
 著者の梅田望夫さんは、言わずと知れた日本のIT分野の若手リーダー的な存在。これまでの日本のIT社会を支えてきた世代と、これからのIT社会を切り開こうとする若い世代との間に橋を架けようとなさっている姿勢には、素直に共感を覚えます。オルタナも、これまでのビジネス界や市民社会を支えてきた人々と、これからのビジネスや市民社会の常識を創り出そうとする人々との架け橋となるような存在でありたいものです。新興メディアである「オルタナ」への応援歌と勝手に解釈して(笑)、5つ★とさせていただきます。

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