変わってきたこと、変わっていなかったこと

変わってきたこと、変わっていなかったこと

変わってきたこと、変わっていなかったこと

息子が2024年春、中学校を卒業しました。コロナ禍を経ての3年間、学びのあり方の変化も感じられた一方で、私たち親世代から変わらない、むしろ改悪された感もある高校入試などを定点観測、備忘録として記しておこうと思います。

息子たちの代は、小学校の最終学年でコロナ禍の直撃を受けて修学旅行などの大きな行事や全国規模の大会(息子は当時、特にご縁はありませんでしたが)が軒並み中止。卒業式も最少人数でどうにか開催できた世代。当時、こんなことも書いています。

未曽有の大規模一斉休校で、どうなる日本の子どもたち?

中学校に入学してからも、特に最初の年は新型コロナの第●波が襲ってきては行事が中止になり、最後の年にようやくフルコースを経験できたかな、という感じでした(家庭科の調理実習も、最後の一年だけでした…)。親として学校に行く機会もめっきり少なくなり、しかも息子の担任が保健体育→技術→保健体育ということで、授業参観で5教科の授業を受けているところを見ることもなく終わりました(苦笑)。

アクティブラーニングやプレゼンは当たり前になりつつも…

 
そんなわけで学習の様子を直接見ていないのですが、息子の話や様子からは、ほぼどの教科でも一対一の対話や複数でのグループディスカッション、その結果をまとめてどこかの段階でパワーポイントを使って発表するというスタイルが定着しているようでした。オンラインでの課題提出も時々あったりで、コロナ禍を経ての中学生の学びのスタイルは着実に変わったと感じています。

一方で、コロナ禍であれほど定着したはずのオンライン授業は、地域によっても違うかもしれませんが、少なくともうちの地域の公立中学校では台風・大雨などで休校になった際にも全く行われませんでした。天気予報の精度が上がり、翌日は休校になる可能性が予測しやすくなっています。そういう時のために一人一台パソコンがあるのですから、持ち帰らせて部分的にでもオンライン授業をさせても良いのではないでしょうか。登校が学びの前提となっている状況は変わらず、その割には安易に休校し過ぎで、休みになった分の授業がきちんと消化できたのか心もとない感じがしました。

親世代から変わっていないことと言えば、高校受験に影響する内申制度は最たるものでした。新学習指導要領に基づき評価基準、具体的には知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度、という3つの項目について何点分の評価が付けば最終的な評点はいくつになるかということは明示されましたが、各科目の評価に至るプロセスは相変わらず不透明でした。実際、息子から聞いた話では一部の教科で定期テストの応用問題を正答すれば、授業中に寝ていても主体性でA評価という事例があったそうで(!)、それってどういうこと?主体性の意味を取り違えていませんか??ーーと、納得できませんでした。

評価に至るプロセスについては、学期の冒頭の授業などで子どもたちにはある程度伝えているようですが、せっかく進路保護者説明会なるものをやっているのですから、肝心な部分は保護者にも共有するなど、教師・生徒・保護者それぞれにとって納得感を持てる工夫をしてもらいたいと思いました。さすがにこの件は、今年度の保護者アンケートで書かせていただきました。後輩の生徒・保護者の皆さんに同じ思いをさせるとすれば、それは残念なことですので。

二極化する高校受験 塾ありきの入試制度って…

 
義務教育の総仕上げとしてやってきた高校受験。わが家として目指したのは、親子で成長できて、最終的には「良かったね」と幸せに終われる受験にしようということでした。しかし、ふたを開けてみるといわゆるトップ校に合格するには進学塾に行くのは当たり前、しかも小学校4~5年生からガッツリ塾で鍛えて合格できるかどうか…という、言ってみれば「遅れてきた中学受験」のような状況。息子は中学生になってから、しかも後述する野球も続けながらでしたので、トップ校を目指すのであれば時すでに遅しではありましたが、最終的にはよく頑張ったと思います。

とはいえ、本当に過酷な受験でした。

神奈川県の公立高校入試では、一部のトップ校群や通学に便利な学校の倍率が異様に高く、公立高校入試にもかかわらず、この群だけで高校2~3校分では下らないかもしれない人数の不合格者が出るという、相当なプレッシャーの下での勝負を強いられます。しかも、この群の受験生にはさらに、特色検査と称した教科横断型の試験を2日目に課せられます。この科目の対策は中学校の授業では取り扱われず、過去問をやるだけで済むものでもありません。中学校としてはこの試験を受ける生徒に対しては実質「どうぞご勝手に」という状態ですので、まさに塾の出番です(イコール収益源ですね)。

 
こうして塾と県教委の相互依存、蜜月関係と言われても仕方がないような塾ありきの入試制度になっているわけですね…。高額の塾代を支払えない家庭の子どもは最初からスタートラインに立てないという、極めてアンフェアな状況になっています。
 
さらに、全県統一の入試制度にもかかわらず、県内でも地域によって、地域内でもさらに学校によって明らかな評点格差があって、アンフェアな入試制度に拍車をかけています。私たち親世代の当時は、隣接学区の学校までなら選択できる学区制でした。今は全県一区なので、同じレベル帯の学校が近隣にあるにもかかわらず、合格可能性を考慮してわざわざ遠くの学校を選ばざるを得ないケースも多発しています。高校生が通学に時間を使いすぎるのは成長期の睡眠と健康から考えてもあまり好ましくないので、親世代の学区制のほうが受験生にとっての負荷が軽く、制度としてまだ良かったのではないかと思えてなりません。

いやいや、私立学校の無償化が始まっているので別に私立高校でもいいじゃない、という考え方もあろうかと思います。その私立高校に関しては、純粋な試験(オープン入試という言い方をします)での定員は全体的にはごくわずかで、大半が中学校での内申点と出願時の形式的な書類提出をもって合格(併願確約や併願優遇などと言います)できてしまいます。まあこれぐらいの学校でいいか!と決めてしまえば、すべては年内で終了。よほど自分を律して勉強や特技を続けられる生徒以外は、残りの期間は何となく過ごして卒業を迎えられてしまいます。範囲の決まった定期テストのみの学力で、高校以降大丈夫なのでしょうか。

それに、無償化と言いますが、国と都道府県から助成される金額(所得により最大46万8000円)を超える授業料・施設費・寄付などが必要な私立高校は多数あります。学校行事や部活動の行動範囲も広がりますので、いわゆる校外活動費も中学生の時よりもはるかに高額です。「無償」ではないんですよね、結局。私立高校に行けるからいいじゃない、とは安易に言えないはずなのです。

塾に課金しながらトップを目指してひたすらやり込むグループと、とにかく無理しないで行けるレベルの学校で良しとするグループーー。高校受験は今、極端なまでに二極化しています。

息子は結果的に受験した高校に合格できたので、ちょっとした成功体験として自信はついたかもしれません。しかし、不透明な内申と塾に行かないと一定水準の学校の入試を突破できない制度を子どもたちの代まで続けてしまったことには、忸怩たる思いが残りました(AIの一般化、人口急減していく孫世代では、さすがに相当変わるでしょう)。

なお、高校受験は中学受験と違って子どもが意思を持って自分の進路を選択できるというのは確かにそうでしたが、選択した後のお金周りのことや手続き関連は親のシゴトです…。神奈川県の公立高校受験に関して、親目線で他にはない必要な情報を書いて下さっているyuki_bonさんのnoteがとても参考になりました。この場を借りてお礼申し上げたいです<(_ _)>

野球は究極の鬼ごっこ

 
学童野球に引き続き、中学年代でも野球を続けた息子。選んだのは、野球を使って高校進学を目指すような子たちが入る硬式野球のクラブチームではなく、サッカーをはじめとする総合型スポーツクラブの一角として2019年に設立された東京ヴェルディ・バンバータ(TVB)U15軟式チームでした。

中学入学当初は身体も小さく「俺、硬式だと怪我しそう」ということで軟式のチームを探すも(中学の部活動はあまり活発ではないようでしたので、中学では体力強化と割り切って陸上部に所属)、車でしか行けないような場所に練習場があったりでなかなか難しく、悩んでいた中で探し当てたチームでした。当時から以下のような考えを持っていたので、仲間と野球を楽しみながら、スポーツマンシップをはじめ野球から色々なことを学べるというこのチームはうってつけでした。

21世紀型人材に必要な能力は野球で養える!

コロナ禍を経て高校野球もいろいろな形で変わってきており、中学野球もいろいろなタイプのチームが増えてきました。とはいえ、高校野球の前哨戦とばかりにまだまだ勝利至上主義が色濃い中学野球界隈。そんな中にあって、個人としてもチームとしても選手たちで考え、決めることを大切にする成長至上主義をモットーとするチームでした。子どもたちが集まれば、その集団なりのルールや楽しみ方が自然と作られて、気がつけば夢中に遊んでいるーー。まるで鬼ごっこをしているかのような感覚で、野球を真剣に楽しめる環境を指導者の方々は作って下さいました。

TVBがチームとして目指すところの考え方がよくまとまっているブログを、チームGMの熊本浩志(クマカン)さんが書いて下さっています。
中学硬式と中学軟式の両方を運営する理由

U-15は活動を始めたばかりで、息子たちが2期生。運営面の細かい部分はまだ確立しきれていない面があることは否めませんが、そこも含めて親子で貴重な経験をさせていただきました。

卒団式の様子も、チームブログにアップされています。クマカンGMの贈る言葉、息子にもしっかり響いていたようで、とても素晴らしかったです。
U-15 二期生卒団式

TVBでの3年間のおかげで、新しい環境や機会にも飛び込んでいける勇気と覚悟が身についたようです。ということで、4月からは戦国・神奈川で公立高校からの下剋上甲子園を目指して頑張るそうです。

最後に。

息子の進学先は当初全く予想も予定もしておらず、同じ県内ながらこれまでほとんどご縁のなかった地域にある高校です。でも、実は私の亡父の出身地にあり、中学3年時の担任の母校という、結果として非常にご縁のある高校に進学することになりました。

私自身、振り返っても今につながるかけがえのない時間を過ごせたとつくづく思える高校生活。息子もそんな濃密な時間を味わいながら、新しい仲間たちと一緒に心身ともにさらに大きく成長していってほしいものです。

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