ゴア氏を突き動かす「道徳的想像力」
地球温暖化問題の解決に向けた貢献をライフワークにする米元副大統領アル・ゴア氏の”半生記”とも言えるドキュメンタリー映画「不都合な真実」が、20日(土)にいよいよ日本で公開されます。幸運なことに、映画公開と同名の翻訳本出版の機をとらえて来日しているゴア氏に先日インタビューすることができました。
インタビューの詳細については、当該の雑誌が発売された時に改めてご紹介させていただくとして(すみません、もったいつけまして…)。実は私、ゴア氏が学生時代からこの問題に関心を抱き続けているとはいえ、副大統領を経て大統領に挑戦して”敗れ”、公職を辞してからもなお様々な角度から精力的にこの問題に関わり続ける原動力は一体どこから来るのかと、かねがね不思議に思っていたんです。でも、今回のインタビューでの彼のある言葉からその一端を伺い知ることができたような気がします。
「道徳的想像力(moral imagination)」
野球場で一緒に手をつないで歩いていた末息子が、自分の手をすり抜けて駆け出した先で交通事故に遭遇。約1カ月の入院生活に寄り添いながら、ゴア氏は自分の人生にとって最も大切な「家族」と「地球環境問題」を、私生活と仕事の最優先事項にすると決意します。そんな当時を振り返りながら、彼はこう語ってくれました。
『私たちは過去には戻ることができませんが、未来に行くことはできます。そして、道徳的な想像力を駆使することによって、創造したい未来を心に描くことができます。(中略)この美しい地球が私たちの手元からすり抜け始めていると感じていただけるのでしたら、強く握り返していただけるのではないでしょうか。そうすることで、皆さんは子どもたちの世代に向けて道徳的な責任を果たすために必要な変化の一翼を担うのです』
物事を変えるには、理論だけでも思いだけでもダメ。理論と思いを兼ね備えた人の「強さ」を改めて思います。
映画では、ゴア氏自身のこのプライベートなエピソードを環境問題の解決に向けた個人の行動を促すスパイス代わりに盛り込むなど、レトリックの巧みさが光りました。エンドロールで個人ができる温暖化防止の行動リストを流すあたりには、個人の力に敬意を払うアメリカ流のメッセージ性が存分に発揮されています。
昨日のプレビューで舞台あいさつするゴア氏