ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

未曽有の大規模一斉休校で、どうなる日本の子どもたち?

2020年6月1日、小学校6年生になった息子は約3カ月ぶりに学校に戻りました。
雨の6月、新しい生活様式のスタートですが、史上初とも言える3月からの大規模一斉休校の影響をもろに受けた日々を記録しておきたく、少しまとまったものを書いてみました。

4月に始業式でちょこっと顔を出して以来の登校でした

▼突然の終了宣言も、早めの春休みを穏やかに過ごす(3月)

日本全国の親たちのほとんど(特に母親、さらには働く母親という点はとりあえず置いておいて)が凍り付いた、新型コロナウイルス流行の影響による全国一斉休校宣言を受けて、息子の5年生生活は突然終了することに。算数と理科、社会で未履修単元が残り、そこはやらなくてもいいということで、学校からは復習プリントが配られました。

私はと言えば、この頃からほぼ完全に近い形で在宅ワークにシフト。ランチ時以外は午前午後と別室で仕事をしなければならないため、息子とは朝ごはんの際にその日のやることを確認、昼ご飯の際に進み具合の確認という感じで、あとは本人に任せるスタンスで臨むことにしました。

修了式の日に持って来てねという復習プリントは、まあまあリーズナブルな分量。日数から逆算しながら1日に取り組む分量を息子と決め、プラス私のほうで未履修単元の短編動画を見つけてURLを記したメールを作り、息子のアドレスに毎日送りました。息子はぶつぶつ言いながらも頑張ってこなし、未履修箇所もそれなりに理解できたようでした。

この間、「子どもたちの学びを止めない」を合言葉に、全国の一部地域の学校や民間企業などによってオンラインでの学習システムやコンテンツの充実につなげようとする様々な取り組みが広がりました。あいにくうちの地域では皆無でしたが、子どもの目線に合わせたメッセージが発信されたり、世界に目を向ければ国のトップが子どもたちからの素朴な質問に丁寧に答える姿もありました。

◆つくば市役所がつくば市内のこどもたちに宛てたメッセージ
http://www.tsukubainfo.jp/jp/info/2020/0228_1948.html?fbclid=IwAR1VqzeYjBAn8GE0-gdirkLLtaPAl2K7rzeQyYbLupDcIup2-GPTFExg6_0

◆デンマーク首相による、コロナウィルスに関する子供のための「記者会見」
https://hyggelig-news.com/2020/03/14/17404/?fbclid=IwAR1sQjaW3qcxiV-iwP8SCL–dpPDFs6yBtCH9-NKhX4-VVnZfaYMldW-uLE#i  

私も息子へのメールで、週に1回は「総合」と記して、こうしたサイトを引用してどう思うかノートにまとめてみようと促していました(だいたい返ってくるのは5行程度でしたけど…)。

野球チームの活動は止まってしまいましたが、算数の個別指導と野球のグループレッスンは通常通りやってもらえたり、午後は野球チームの友達と時々遊んだりしていたので、息子は頭も体もそれなりに動かしながらリズムをつけて過ごせていました。

◆千葉ロッテ—マリーンズのドラフト1位佐々木朗希投手はこの間、折に触れて野球少年少女のためにトレーニング動画を公開してくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=28EioBxDxz4

ところが…。

▼緊急事態宣言! とにかく楽しさ優先で(4月)

感染者はこの間どんどん増え続け、ついに緊急事態宣言が発動されてしまいました。入学式ができないまま休校が続いた地域もある中、息子の学校は何とか入学式を行い、新クラスで進級したものの、登校日が設定されることもなく休校が継続。先生方、現場の混乱はお察しできるものの、次の課題(また復習プリント)が郵送されるまで、約2週間の空白が生じました(この間、保護者が教科書を取りに行きました…)。

3月は5年生のまとめということで、未履修分も含めてそれなりに勉強していた息子でしたが、4月の休校継続期間に入ると「休校なのになんで勉強しなくちゃならないの??」とキレる始末…。そこで私はハードルを低くして「5月はどうなるか分からないけど、君がそう思うなら、この間は漢字と計算だけはしっかりやろう」と提案。渋々ながらも、息子はそこは約束を守って毎日取り組みました。

もちろん、自分から進んで学習したり、勉強を見られる親から勧められた動画を視聴したり、プログラムに参加するなどできたお子さんもいたと思います。 さまざまなオンライン学習プラットフォームも、この機会にどんどん可視化されるようになりました。しかしその多くは、一方的な知識伝授型のもので(もちろんそれらは必要ですが)、小学生あたりだとまだ一人での自学自習には限度があります。そうなると、多くの親御さんが心配するゲーム&Youtubeとなるわけで…(苦笑)。

息子もご多分に漏れませんでしたが、無駄なケンカで家庭内を険悪にするよりも、この時期は規則正しく寝起きし、しっかり食べ、よく笑うことが何よりも大切だと気持ちを切り替えて、楽しく過ごすことを優先しました。そのおかげで、息子は背が伸びましたし(笑)、私はお仕事をスムーズに進めることができました。

楽しく過ごすと言えば、野球もです。

楽しいから!が最強なワケ

開幕間近だった春の公式戦 は中止に。外側からの動機づけ(目標)がなくなるとモチベーションを保ちにくいというのは、甲子園やインターハイなどの中止で社会問題化している全国の高校生たちの現状を見れば理解できます。

一方の息子ですが、この間勉強へのモチベーションは明らかに下がっていたものの、外遊びがままならなくなる中でも、部屋でできるトレーニングに毎日何らかの形で取り組んでいました。

そんな彼の姿を見ていて、楽しい!は立派な、そして実は最高のモチベーションになるということを改めて思い知らされたのでした。新型コロナウイルスの影響で、今後しばらく外での活動で制約が続く可能性があります。でも、楽しい!という気持ちは何にも邪魔されません。ウイルスとの共存が求められるようになると、自分にとって楽しいことを持っていることが強みになっていくことでしょう。

この頃から、算数の個別指導ではオンライン授業に切り替わりました

私はこの頃、ZOOM飲みに初参戦!こればかりはリアルに勝るものはなさそうですが、これはこれで楽しかった

▼休校継続、「丸投げ」と「放置」の中で子どもたちは…(5月)

大型連休に入っても新型コロナウイルスが沈静化することはなく、学校もそのまま休校継続に。しかし、4月と全く異なったのが、連休明けから2~3週間の期間、新しい学年の履修内容の学習を子どもたちに、家庭に委ねたことでした。文科省が、家庭での学習内容が身についていることが確認できれば学校で再び教える必要はない、とする通達を出してしまったのは最悪でした。これじゃあ、学校の存在意義が問われかねません。

この頃から、学校から配られた毎日の時間割に沿って大量の教科科目の学習や図工などの技術科目まで行うよう求められて、親も子どもも悲鳴を上げているといった様子が一部地域から伝わってくるようになってきました。いわゆる、「スパルタ丸投げ系」です。親が働いていれば一緒に取り組むのは無理でしょうし、取り組めたとしても学校があればしなくても良かった親子げんかも増えたことでしょう(もちろん、円満に取り組めたご家庭もあったと思います)。 こういう地域もあるんだって、と息子に話すと「学校じゃないのに、なんで学校と同じように過ごさなきゃいけないの?学習すべきところが身に付けばいいんでしょ?」ともっともなご意見が…。

息子の小学校からも、5月中旬に学校から課題一式が届きました。国語、算数、理科、社会で最初の2、3単元を学習するよう求める内容で、今年度から正式科目となる英語に至っても結構な量のドリルをこなすよう求めていました。息子は開口一番、その量の多さに「これじゃあ今月中に終えられない…」とキレかけましたが、一緒にカレンダーとにらめっこしたところ、何とか終えられることが判明。徐々に冷静さを取り戻していきました。

ちなみに、学校からの課題は新しい担任の先生がポストインしてくれたそうです(これは先生の仕事じゃないでしょ、と思いましたが…)。 しかし、安否確認を兼ねてドア越しにお話しすることはなく、その後も結局電話一本もないままでした。毎日の時間割が来なかったのは我が家としては幸いでしたが、オンライン朝会なども全くない中、うちの地域は「ゆるゆる放置系」とも言えるような状態でした。

オンライン教育の現実をイやというほど

そのオンライン学習。この間に文科省が実施した全国調査で、双方向のオンライン学習に取り組めている学校は全国でわずか5%しかありませんでした(ああ…)。広島県や熊本市、兵庫県尼崎市など教育委員会が音頭を取っていち早く取り組み始めた地域もありましたが、大半の地域では短時間の朝会すら行われなかったようでした。

息子も以前から続けていた算数の個別指導と英会話レッスンはオンラインにシフトしてそれなりに楽しそうに取り組むようになったものの、学校はと言えば家庭のオンライン環境を調査しただけで、結局この期間に何も始まることはありませんでした…。

日本の公立学校ではオンラインの特性を活かした双方向・多方向の学びのプラットフォームが整備されておらず、先生や友だちとの意見交換など、集まることで促進されるはずの学びの機会がこの間、完全に奪われてしまいました。このことには今でも憤りを感じていますし、この間子どもたちが実質的に「放置」されたことには、やはり失望せざるを得ませんでした。

バッティングセンターも営業再開、早速行ってきました!

▼3月の大人の行動で子どもたちが犠牲に… 今度は子どもたちのために

この3カ月の休校期間を改めて振り返ってみると、3月に子どもたちの行動のみ制限をかけ、大人が動くことを無防備に容認したことで、学びと成長の機会を奪われた全国の多くの子どもたちが犠牲になってしまったと私は捉えています。 一斉休校が終わろうとしているこのタイミングで、休校の効果はほぼなかったとする案の定な総括も出ました。失われたこの3か月間の結果がこれから子どもたちの間で、教育の現場で、どのような形で表れるのか、社会全体で関心を持ち続けるべきだと思います。

◆学校閉鎖は効果薄い 日本小児科学会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200522/k10012441071000.html

9月入学、オンライン学習 今度は大人が知恵を絞る時

一方で、未曽有の全国一斉休校が行われたことによって、これまでの日本の教育の”常識”(イコール世界の非常識が多いですが)や教育のあり方について議論が起こったのは収穫と捉えたいです。9月入学に端を発した議論は、習熟度を問うことなく履修主義で進めることの是非をクローズアップさせました(私は、2020年度については終了時点を複数パターンをシュミレートすべきだと思っていますが)。オンライン学習の推進をきっかけに、オンラインでの強みと学校で集まって学ぶことの意義を組み合わせながら新たな教育の形を作り上げられる可能性も、いよいよ意識され始めたと言えるでしょう。

このまま日本の教育システムが結局大枠では何も変わらないとなれば、「一斉休校、そういえばそんなことがあったね~」で終わってしまいます。子どもたちの学びと成長の機会を奪っただけで終わらせないよう、今度は子どもたちのために大人が動く時です。

私としては、世の中の動きに対して腹の立つことやもどかしいことが多かった一方で、息子はと言えば、時々愚痴が出たり、イライラを爆発させたりしながらも、勉強とトレーニングと自由時間(ゲーム&Youtube)を毎朝スケジュールに落とし込んで、自分なりに日々をデザインしていました。自由時間が圧倒的に多かったけれども(苦笑)、その姿からは彼なりのタイムマネジメントやセルフコントロールができつつあることが見て取れました。

今回の未曽有の大規模休校は、息子や日本の子どもたちにとって吉と出るか、凶と出るか。あるいは、大人が気にするのをよそに時は流れ、子どもたちは良きに成長していくのか—―。

今秋とも今冬とも言われる第二波、第三波が気になる中ではありますが、まずは第一波の日々を記録と記憶を書き留めておきます。