ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

次世代に引き継がれる「種」ー映画『森聞き』を観て

全国の高校生が参加し、「森の名人」の智恵や技を「聞き書き」する『森の聞き書き甲子園』という活動をご存知でしょうか。
2002年に始まったこの活動。今年で、10周年を迎えます。毎年約100人の高校生たちがそれぞれ、一人の名人の日常生活に泊まりがけで触れながら、名人たちの仕事の来し方をひたすら聞いてゆきます。この活動をテーマにしたドキュメンタリー映画『森聞き』を観ました。4人の高校生たちの聞き書きに密着したこの作品、ぜひ多くの人に見て欲しいと思えるものでした。
2つのことが心に染みました。
日本は国土の7割を森林が占める森の国。ところが、外材に押されて林業が衰退する中、担い手は減り続けています。若い層の就農ならぬ「就林」の事例も最近取り上げられますが、生活が成り立ちにくい現状はあまり変わっていません。豊かな森林資源をあますところなく使う日本独自の生活技術を担ってきた、木こりや焼畑、茅葺き職人、漁師などの「名人」たちも、このままでは無形文化財になってしまいかねない。
ゆったりとした森の時間の流れに身を委ねながら、豊かな森の行く末を考えずにはいられませんでした。
一方で、決して悲観するものではない、という思いも湧いてきました。
作品中でも取り上げられた杉の種取り名人さんなどは、林業の担い手が少なくなれば種を植えるという行為そのものがなくなるので、「生業」としては消え去ってしまうかもしれない。それでも、何かを「生業」として生きてゆくことの潔さと尊さに接して、それぞれの進路を歩み始めた高校生たちに「生きる力」という種は引き継がれた、と映像を見ながらしみじみ感じることができました。
この森の聞き書き甲子園、もっと多くの人に意義を知って欲しいです。息子にもチャレンジして欲しいな、と思ったぐらい。うちの子が高校生になる頃、「森の名人」が果たしてどのぐらいいるのか、日本の森がどのような風景になっているのかーということも考えつつ、ではありますが…。
映画『森聞き』は、3月5日から東京・ポレポレ東中野、26日から鹿児島・ガーデンズシネマ、5月7日からは名古屋・シネマスコーレで公開されることが決まったそうです。
森の聞き書き甲子園については、環境映像のインターネットTV green.tv からも映像が配信しています。こちらもぜひ、ご覧下さい。