ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

奉仕的リーダーシップとCSR経営

 環境保護や働く人たちの労働環境といった社会的責任に配慮しながら安定した利益を上げるCSR(企業の社会的責任)経営で成果を上げてきた(上げつつある)米企業の最新動向を紹介した ”Faith and Fortune: The Quiet Revolution to Reform American Business” (Marc Gunther 著)を読んだ。

Faith and Fortune: The Quiet Revolution To Reform American Business Faith and Fortune: The Quiet Revolution To Reform American Business
Marc Gunther (2004/10)
Crown Pub

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 ここには、格安航空の老舗サウスウエスト航空がServant Leadershipと呼ばれる人材マネジメントの考え方を基本方針としていることが、同社のCSR経営を支えていると書かれていた。Servant Leadership(「奉仕的リーダーシップ」)、これがなかなか面白い。
 Servant Leadershipとは、リーダーの役割を「周囲の他人(部下)が自己の価値と能力を最大限発揮できるよう他人(部下に)“仕える”こと」と捉える考え方。サウスウエスト航空では、リーダー役である幹部級はもちろん、全従業員にServant Leadershipを徹底させることで、自分の仕事が顧客だけではなく別部署の同僚たちにどのような影響を与えるか常に考えて行動するよう促している。
 2001年9月11日の同時テロ発生直後。行き先変更で地上職員のいない空港に機体を着陸させたあるパイロットは、自ら乗客の荷物を取り出し、自分のクレジットカードを使って乗客のためにホテルやレンタカーを予約し、あるスチュワーデスは一人旅の子どもたちをホテルの自室に宿泊させ、ある地上職員はテロの標的となったユナイテッド、アメリカン両航空会社の予約カウンターに手製のクッキーを差し入れたとか。Servant Leadershipを植え付けられた従業員たちは、未曾有の危機的状況の中で「これは担当外の仕事だから」などと言うことなく、それぞれが「私を捨てて人に仕える」というServant Leadershipの真価をいかんなく発揮して危機を乗り越えたそうだ。
 企業経営の目標と言えば、まずは「株主利益の最大化」が第一だろう。しかしサウスウエストの場合、順番がちょっと違う。「まず社員を大切に扱うこと。そうすれば、彼らはお客様と正しく接する。そうすれば、お客様は私たちを選んでくれる。そうすれば、私たちは株主に利益を還元できる」(同社のコリーン・バレット会長兼COO)。この好循環が、同社のCSR経営の真髄なのだろう。
 最後に、印象に残った同社の人事担当副会長の一言から。“Once you stop thinking about yourself, what you can get done is incredible.” リーダーでなくても、組織人でなくても、仕事人であれば誰でも一度は持ってみたい発想だ。
 新年明けましておめでとうございます。私の今年の人生予報は「忍んで飛ぶ」。その心は-。来年の今ごろお話できればいいなと思っています。今年は1回日本に帰りますので、どうぞよろしくお願いします。