社会責任ビジネスの行く末 その2

社会責任ビジネスの行く末 その2

社会責任ビジネスの行く末 その2

 長年にわたってCSR(企業の社会的責任)を実践する特色ある中小企業が、多国籍企業に買収された後も企業理念を維持できるかというテーマについて、以前に社会責任ビジネスの行く末で書いた。今日はその第2弾。前回はストーニーフィールド・ファームベン&ジェリーという食品メーカーについてだったが、今回は最近相次いだ多国籍企業によるナチュラルケア用品メーカーの買収について取り上げてみたい。
 
 まずは、化粧品世界最大手の仏ロレアルによる英ザ・ボディショップ買収のニュースから。ボディショップと言えば、詰め替えサービスの提供や動物実験への反対、フェアトレードによる自然素材の調達などに早くから取り組んできた社会責任ビジネスの先駆者として知られる。ただ、90年代に株式上場して世界展開の路線を選んだことで、創業当初の理念からかけ離れてしまったとの見方も少なくない。そしてこのたびのロレアルへの身売り。お世辞にもCSRに熱心とは言えないエスティーローダーの傘下に入っても、創業以来の環境配慮型ビジネスを押し進めるナチュラルヘアケア用品大手のアヴェダのように独自の存在感を示し続けることができるのか。社会責任ビジネスのパイオニアとしての真価が問われる。
 
 もう一つ注目すべきニュースは、世界有数の日用品メーカーの米コルゲートがナチュラルケア用品の米トムズ・オブ・メインを買収する件。
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 社会責任ビジネスの世界で敬愛されるトムズ・オブ・メイン共同創業者のトム/ケイト・チャッペル夫妻は、多国籍企業との恊働にはこれまでどちらかと言うと否定的な立場を取ってきた。それだけに、「単独のままでは拡大し続けるナチュラルケア用品の需要にもはや対応できない」という声明内容からは、苦渋とまではいかなくても相当難しい判断だったことが伺える。夫妻は声明の中で、添加物不使用の原則を貫くことや、利益の10%を地域活動に寄付すること、就業時間の5%を社員によるボランティア活動に充てることといった一連の社会的取り組みを今後も続けると強調している。ぜひそうあって欲しいと思う。
 環境や社会へのユニークな貢献で知られる中小企業が同業の多国籍企業に買収される動きは、2000年ごろからまずは食品メーカーを中心に本格化した。世界で無数のブランドを展開するネスレやユニリバーといった多国籍企業が、オーガニック食品メーカーを傘下に入れたのだ。その動きが、今度は日用品メーカーにも押し寄せて来た。コルゲートは、業界内では比較的早くからCSRに熱心に取り組み始めた企業ではある。しかし、自分たちで一から自然素材の歯磨き粉やマウスウォッシュのブランドを立ち上げるよりも、この分野で不動の地位を築いたトムズ・オブ・メインを買収したほうがてっとり早かったのだろう。
 自前で社会責任ビジネスを創造するよりも、既に実績のある社会責任ビジネスを買収することでCSRへの取り組みを強めようとする大手企業の動き。今後、世界的にますます加速しそうな気配である。

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