AI社会のリアリティと希望について

AI社会のリアリティと希望について

AI社会のリアリティと希望について

AIの導入でこれからの社会がどうなるか。とりわけ、仕事のあり方、働き方がどうなるかについての議論が活発ですね。

平積みになっているのを目にした方もいるはずですので、もうお読みになったという方も少なくないかもしれません(公称15万部超えとのことですので)。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井紀子 東洋経済新報社)
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AIを駆使して東大の入試突破を目指した通称「東ロボくん」による挑戦のプロセスで分かった、近い将来のAIの可能性と限界が平易な文章で書かれています。AIについて、過小評価も過大評価もせず、適正に伝えているという点でも好感が持てました。

 

著者からいただいた問いを私なりに解釈すると、

 

課題(フレーム)の枠組みが決まった場面では強さを発揮するAIを目の前に、人間はどのような能力を磨いてどのような領域で何をすべきか。

 

ということかと思います。

 

この問いを前に思い出したのが、通信社の記者時代のことでした。

 

私は経済ニュース部門の記者だったので、特に新人時代は企業決算だったり、(今はやりの!?)経済指標だったり、為替相場だったりと、数字を正確に伝えることが命というニュース記事を多く書いていました。というよりも、書かされていました。

 

そう、こういう記事を書くのが苦痛だったんですよ。数字に苦手意識もあったし…(苦笑)。

 

でも、こういう仕事、まさにAIに向いてるんです。現に、米経済ニュース通信社のブルームバーグでは、記事制作にAIが一部導入されているそうです。

 

これを聞いて、私は万歳~~と思ったものでした(もっと早くこういう世界が来てほしかったけど)。数字系の記事はAIに任せた上で、ではそのニュース(イコール事実)からどのようなことが分かるのか、どのような対策が打てるのかといった発展的な記事を書くことに注力できる、と。

 

その際にカギになるのは、読解力であり、行間を推し量る想像力であり、もちろん記者ですから取材対象からきちんと取材できる質問力だったりするわけです。

 

でも、本書の著者グループが実施した大規模調査では、日本の中高生の3人に1人が教科書の内容を正しく読めていないことが伺える衝撃的な結果だったそうです。

 

このレベルの中高生が入りやすくなった日本の大学を簡単に卒業して、果たして仕事はあるのか――。AIロボットは東大は無理だったけれども、既にいわゆるMARCHと言われる大学合格のレベルに達しているそうです。

 

彼らがAIに勝てるか、著者は否定的です。その先には、AIにはできない仕事ができる人材が不足する一方、失業者が溢れる悲観的な未来が待っているのではないか、と言うのです。

 

一方で、「一筋の光明」として著者が言及しているのが、糸井重里さん率いる「ほぼ日」のビジネスモデルでした。大きくは儲からないけど、地に足をつけてステークホルダーとの関係性を紡いでいく中で適正利益を得ていく経済のあり方。AI社会がサステナブルな経済の広がりにどのように作用していくのか、非常に興味深い点です。

 

たまたま目にしたこの記事も合わせて読むと、近い将来のAIと人間の関係性を考える上で出発点になると思います。

非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ(2019年2月12日 ダイヤモンド・オンライン)

 

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