貧困をなくすには、教育を変えることだ
子どもの教育格差の解消と若者のリーダーシップ育成を目指す米NPO Teach for America創設者のウェンディ・コップさんが初来日。今年1月に正式発足し、日本でTFAモデルを展開するTeach for Japan代表の松田悠介さんとともに、記者会見に臨みました。
ウェンディさんと松田さん
TFAは、教育困難地域(貧困層が多い、低学力など)の公立校に新卒人材を2年間派遣するプログラムを通じて、全校レベルでの学力向上とともに、現場での経験を通じてリーダーシップを育んだ若手を輩出するという形で、全米各地で数多くの実績を挙げています。全米就職ランキング1位になったことでも知られてます。
全米就職ランキング1位のNPO、日本でも展開(2010年9月30日『オルタナ』)
ウェンディさんの本も翻訳出版されています↓
いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと (2009/04/07) ウェンディ コップ、Wendy Kopp 他 |
ウェンディさんに「教育格差という観点から見て、日本の現状の何が一番問題だと思うか」と尋ねてみました。すると「塾や習い事といった”補習”への依存が大きすぎ。教育イコール親がどれだけ子どもにお金をかけられるか―になっているようで、果たしてこれは健全なのでしょうか」との答えが返って来ました。「学校にいる間の学びを最大化させるためにできることはもっとあるはず」とも。さすが、短期間の滞在にもかかわらず、日本の教育格差の問題の本質をきちんと理解しておられました。
そんなTFAの手法をベースに、世界23カ国で展開されている同様のプログラムをネットワーキングする目的で、ウェンディさんが代表を務めるTeach for Allが発足。Teach for Japanは、日本でのTFAネットワーク加盟団体として、来年度から日本国内の自治体・教育委員会と連携して教員派遣事業を始めようとしています。
TFJ代表の松田さんは、家庭の経済・社会状況が子どもの学力や将来の進路を左右しすぎている日本の現状を数字を挙げながら紹介してくれました。7人に1人の子どもが経済的な理由で十分な学習環境を得られていない。全国の子どもたちの15%もが就学援助(学用品や給食費などへの公的支援)を受けている―。親の経済力が子どもの成長環境にマイナスの影響を及ぼしてはならないはずなのに、現実にはその真逆のことが進行しているのです。
松田さんは「現在実施している学習支援プログラム『寺子屋くらぶ』に教員応募してくる大学生は、間違いなくトップクラスの人材。いかにして彼らのような人材を受け入れてくれる自治体と出会えるかが目下の課題」とのことでした。
TFAはコロンビア・ビジネススクール客員研究員だった2005年に受講した「社会起業家論」のケースで取り上げられていたことから知り、拙著
ロハス・ワールドリポート―人と環境を大切にする生き方 (ソトコト新書)でも、教育、学びについてのオルタナティブを取り上げた章で紹介しました。当時はアメリカ独特の社会課題にスケール大きくチャレンジするNPOとして注目してましたが、親となった今となっては、子どもの将来に関わるテーマに取り組む超身近なNPOとして見る目が変わりました。
「貧困をなくすには、教育を変えることだ」というウェンディさんのメッセージはとてもパワフルで、TFAモデルの重要性を改めて感じることができます。公教育改革を通じて、子どもたちのやる気と学力を伸ばし、若者のリーダーシップを育てることを目指すTeach for Japan。これからが注目です!