どうする、日本の暮らしとエネルギー

どうする、日本の暮らしとエネルギー

どうする、日本の暮らしとエネルギー

東日本大震災後、大きく変わり始めた暮らしとエネルギーのあり方を考える緊急フォーラム「どうする、日本の暮らしとエネルギー」(読売新聞大阪本社主催)が8月下旬に大阪市内で開かれ、パネリストの一人としてお話しさせていただきました。
 東工大大学院の柏木孝夫教授は、基調講演の中で、2020~30年にかけての日本のエネルギー供給の予想図を示されました。まず、電力消費量は現状比2割削減。その上で、これまで供給量全体の50%を賄うとしていた原子力を25%に、残り25%が自然エネルギーと燃料電池など分散型発電、10%が大型水力、40%が石炭・ガス火力という比率が適正だろうとの見通しを示していました。
 それでは、どのようにそれを実現するのか―。柏木教授は、消費量全体の6割を占める家庭と業務部門で一層の省エネルギーを行い、産業部門ではエネルギーの高効率化で対応すれば、経済を犠牲にせずに低炭素社会に移行できる、とのお考えでした。柏木教授は国のエネルギー政策に様々な形で関わっておられる方なので、そっくりそのまま同じ数字、内容とはいかないまでも、今後の日本のエネルギー政策の土台はこんな感じになるだろう、ということは念頭に置いておいたほうが良さそうです。
 
 基調講演に続いては、柏木教授、積水ハウス環境推進部長の石田健一さんとともに、ポスト大震災の暮らしとエネルギーの現在、10年ぐらい先の未来についてディスカッションしました。低炭素住宅を手がける積水ハウスでは、太陽光発電は既に7割を超えていましたが、震災後は8割を超えたとのこと。震災前には2割程度だった燃料電池は3割超に。震災後は電気だけに頼らないガス併用住宅の比率が高まり、オール電化の比率は半分を切ったそうです。人々の意識変化は、こんなところにしっかりと表れていたのですね。
 同社は、太陽光発電、燃料電池、蓄電池を備えた世界初の3電池連動「グリーンファースト ハイブリッド」を、予定より前倒しで8月初旬に発売。いざという時に備えて、送電網からの電力供給だけに頼らないスタイルを求めるようになった、震災後の人々のニーズの変化に対応したそうです。
 私からは、こうした国やメーカーレベルで進むエネルギーのグランドデザインづくりの動きを知った上で、自分はどういう暮らしがしたいのか考えてみる必要があるとお話しさせていただきました。グランドデザインを知るのと、ありたい姿を考えるのはどちらも大切。そうして初めて、例えばうちの家ではもうそんなに電気使わなくていいから、25%にするという原子力をもう少し減らせないか、あるいはなくせないか―といった議論を始めることができると思うのです。そういう意味では、実はまだ議員も国民も議論の入り口にすら立っていないのかも、と改めて感じた1日でした。今回のエネルギーフォーラムが、その入り口を開ける機会になることを願いつつ…。
 フォーラムの詳報は、9月20日付け読売新聞関西版に掲載されています。よろしければ、ご覧下さいませ。

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