「中立」はありえない
ドキュメンタリー映画「六ヶ所村ラプソディー」を観ました。 今年に入って観に行った映画としては「不都合な真実」以来でしたが、これは“日本版・不都合な真実”と言っても良いぐらい、私たちが目をそらしてはならない問題を突きつけています。
映画の舞台になる青森県六ヶ所村は、日本各地の原子力発電所から出る放射性廃棄物を処理する再処理工場が建設された場所。テスト段階を経て、今年中には本格的に稼働する予定です。着々と前進する国家プロジェクトのはざまには、再処理工場で働く人たちの作業着のクリーニングを受注したクリーニング店主や、“再処理工場特需”を当て込んで酪農業から転換した建設会社社長のように、再処理工場と命運をともにする人たちがいます。その一方で、有機無農薬で安全な食を提供してきた農家の人々は、再処理工場を止めたい一心で活動しています。賛成・反対それぞれの立場で再処理工場と向き合う人々の姿を追いながら、カメラは六ヶ所村の将来を暗示させるある場所に飛びます。
英国セラフィールド。ここにあるセラフィールド核廃棄物再処理工場では、2005年5月に大量の放射線物質が漏洩する事故が発生。これを受けて同工場は、海外からの委託分を処理し終え次第閉鎖されることに。周辺の海域では通常の70倍もの放射能が検出され、子どもたちの白血病の罹患率も年を追うごとに上がっています。
六ヶ所村がいつセラフィールドと同じ運命に見舞われるか、誰も知る由はありません。しかし「だからこそ立ち止まろう」ではなく「それでもやってしまえ」というのが、六ヶ所村の、もっと言えば日本のエネルギー政策の現状です。
「原発は怖いけど、なくなったら困るだろうから賛成でも反対でもない」という意見をよく耳にします。この映画を観終わると、このような“中立”を装う立場は結局賛成にすぎないというのをしみじみと実感させられます。再処理工場のそばで44基の風力発電機が回る光景は、あまりに残酷な日本の“不都合な真実”です。