CSR&サスティナビリティ 金融界がやるべきこと
先週半ば、SIF-Japanと日本政策投資銀行の共催で行われた『 責任投資原則(PRI)~持続可能な社会の実現に向けて~』というシンポジウムに出掛けました。持続可能な社会を実現させるには、経済の血流に当たる金融の分野が動かなければ何も始まらないと常々思っていましたが、ようやくそのような流れが出てきたという本格的な期待感を抱かせる内容でした。
そもそもPRIとは…
…機関投資家などに対して、環境・社会・企業統治上の問題(以下ESG)を投資行動の中で考慮するよう促す行動規範で、国連環境基金(UNEP)と国連グローバルコンパクトの下で提唱されたものです。署名した機関には、投資分析や株主行動にESGの視点を織り込むなどといった6つの原則(日本語サイトもあり)を遵守することが求められます。
金融界によるCSR&サスティナビリティへの関与というテーマで言えば、世界銀行とシティバンクなどが主導して2003年にスタートしたEquator Principles(赤道原則)というものが既にあります。EPが金融機関のプロジェクトファイナンス事業に限定してESGに配慮すべしとしているのに対して、PRIは金融機関の業務全般はもちろんのこと、まとまった資金を長期運用する年金基金にまでESGへの配慮を拡大させたものといって良いかと思います。
PRIは今年4月のスタート以来、約120機関(総資産にすると5兆ドル相当)が署名。日本企業では、金融機関として三菱UFJ信託銀行と三井トラスト・ホールディングス、住友信託銀行、みずほ信託銀行、大和証券投資信託委託、ニッセイ・アセットマネジメント、損保ジャパンが、年金基金としてキッコーマン年金基金の8社が署名しています(本日現在)。
金融界の外にいる人たちにとっては、ESGに配慮した投資行動といって真っ先に思い浮かぶのは社会的責任投資(SRI)でしょう。そのSRIに対して、日本の金融機関は長年にわたっていわゆる「受託者責任」(ごくごく簡単に言ってしまえば、年金や投資信託の運営者は、資産を託した投資家の要求、つまりできるだけ資産を増やして欲しいという要求に応えなければならないということ)に反するとして及び腰でしたし、今でもそのような考えを持っていらっしゃる方が少なからずいるようです。そんな中で印象的だったのは、このシンポでプレゼンテーションしたある署名企業の方が「ESGへの配慮を織り込んだ投資や運用を行なわないほうが、むしろ受託者責任に反する」という趣旨の発言をなさっていたこと。どのようなビジネスに対してもESGへの配慮を求める時代の追い風が、金融の世界にも及んでいることを実感せずにはいられませんでした。
日本の金融機関のCSR活動というと、地域の清掃ボランティアへの参加や植林やメセナといったものばかりが目立っていた印象がありました。もちろん、こうした活動を軽視する訳ではありません。しかし、PRIなどを端緒に本業を通じて堂々とCSRやサスティナビリティを実践することで、金融機関という特質を生かして、さらに大きな社会的インパクトをもたらして欲しい。そしてこれこそが、金融機関に求められる”社会的責任”だと、私は思うのです。