ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

孤独と貧困から自由になる3つのシフトを!

『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』(プレジデント社)という本、もう読まれましたか?2025年ごろに予想される地球規模の社会のありように基づき、孤独と貧困から自由な未来を得るために3つのシフトを心掛けてみませんか―と呼びかけるこの本は、世界各国で大ヒット。このほど、著者でロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンさんの来日セミナーが開かれたので、行って来ました(メディアパスではなく一般来場で入ったので、写真撮影NGでした…)。
本の冒頭にも書かれているのですが、グラットンさんはまずなぜこの本を書いたのかということから話してくれました。20年以上大学で教鞭を執り、組織経営論のスペシャリストとして多国籍企業や政府に助言する中、5年ほど前からグローバル化による変化を実感するようになったのだとか。それが組織運営にどう影響するのか、生活にはどう影響するのかということに関心が向いていったそうです。さらに、2人の息子さんの母親として、子どもたちの職業選択にも変化を呼び起こす可能性があるはずだとも考えたそうです。
本書では、2025年ごろの未来を形づくる要素として、以下の5つが挙げられています。
1、テクノロジーの進化
いわずもがな、ですね。
2、グローバル化の進展
グラットン教授は、来日セミナーでは「日本人中心主義は短期的には機能するかもしれないが、長期的には疑わしい」と発言していました。ダイバーシティは不可避、と。
3、人口構造の変化と長寿化
グラットン教授は「長時間労働で健康を害していては、70、80歳まで働けない。もっと休みましょう」とさかんに呼びかけていました。
4、社会の変化
 もっとも象徴的なのは、家族のあり方が変わるということ。もっと言うと、単身世帯が増えるということです。
5、エネルギー環境問題の深刻化
ここでは説明しません。
その上で、私たちは今2つの道の分かれ目に立っていると言います。
<漠然と迎える未来の暗い現実>
・(グローバル化、仕事の細分化の影響で)いつも時間に追われ続ける
・(バーチャル化、国際移住の進行などで)孤独が深まる状況が生まれやすい
・(終身雇用の崩壊、地域間格差、世代間格差などで)繁栄から締め出される
<自由で創造的な未来>
・コ・クリエーションの未来
専門家より正しい判断を下せる賢い群衆が誕生し世界の課題を解決する上で、集合知の重要性がもっと評価されるようになる。
・ミニ起業家の活躍
大組織を中心とするエコシステムの中で、特技や専門性をもって仕事をする個人が増える。
そうだとすれば、やはり自由で創造的な未来に生きたいもの。そのためには、働き方と生き方にまつわる3つのシフトを実践すべし、とグラットン教授は説きます。
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
専門的技能を連続的に取得して専門分野を広げていくこと、です。
協力してイノベーションを起こせる人的ネットワークを
頼りになる同志(posse)、自分とはタイプの違う人たちとのつながり(ソーシャルメディアでのご縁など)、自己再生のコミュニティ(家族、親友、シェアハウスの住民など)。
大量消費から情熱を傾けられる経験を
よくぞ言って下さいました、という点です。
グラットン教授は最後に、「われわれは過渡期にあります。すべての人にシフトを求めるつもりはありませんが、未来を知り、備えることが大切だということは伝えたい」と呼びかけました。
その後は、近著『採用基準』(ダイヤモンド社)が話題の人材コンサルタント伊賀泰代さんとの対談形式による質疑が繰り広げられました。この部分もなかなか興味深かったので、一部ご紹介します。
Q(伊賀)新興国の人たちにとっても、同じ未来が待っているのか?
A(グラットン)基本的にはそう。新興国でも、この本はよく読まれた。今年のダボス会議での主要テーマの一つは、若年層の失業問題。新興国ではテロの温床にもなりうるということで、ものすごく危機感が広がっている。
Q高学歴でも仕事がない現状。個人として何をすべきか?
Aこの問題に対しては、多様なステークホルダーによる協力が必要。大学は、仕事に役立つ教育をもっと意識すべきだろう。政府が若者に対して、どのような分野の仕事をすべきかということについて様々な発信をしている国もある。ドイツとシンガポールが好例。企業と個人はかつては親子のようなものだったが、今は個人対個人。一人ひとりがよく考えないといけない。
Q仕事に役立つことを学ぶばかりでは、社会がつまらないのでは?
Aその通り。社会には多様性が必要だ。選択した職業の現実を知ることが大切。
Q解雇しやすくなれば、仕事が増えるのか?
A研究では、規制が厳しい国は雇用を生まないという傾向が出ている。上海は今やソフトウエア起業のメッカだ。
Q若い人にそういう気持ちにさせるには、教育で、政府で、家庭で、どうすれば良いのか?
A政府が起業を奨励することが大切だ。政府部門に行く人ばかりでは、何の価値も生まれない。
Q2025年の未来を知るにつけ、才能のある人とない人との格差が広がるということではないかと思うが?
Aその通り。トップ20%の人たちは、必ず発掘されることになるだろう。その人が大成するかは能力+決意で決まるので、機会が平等になる。
Qこの本は、世代によって受け止められ方が違うと思う。若い人と中高年にそれぞれメッセージを。
A 40歳を超えても、好奇心を持って学習を続けましょう。若い人たちは、企業や政治に求めず、自分で決めましょう。お金と自分の関係についてもしっかり考えましょう。何が自分を幸せにするのか、もっと深く考えましょう。そして最後に、皆さんもっと休みましょう!
200人は優に来ていたセミナー会場はすし詰め状態。働くということ、働き方の未来について深い関心を持った人たちがこれほどいようとは、という点でとても勇気づけられる機会でした。『ワーク・シフト』に続くグラットン教授の次の著書『The key』では、2025年に向けた変化に企業はどう対応すべきかについてフォーカスするのだそうです。こちらも楽しみです!
来日前に行われたグラットン教授のインタビュー記事、こちらに掲載されています。
「2025年、日本人が孤独で貧困な人生を送る可能性」(ダイヤモンド・オンライン)