就活が変われば社会が変わる

就活が変われば社会が変わる

就活が変われば社会が変わる

私は今、職種も年代も違う仲間たちと「ワークシフトで日本を変えよう!働き方改革研究所」というプロジェクトを始めています。そこで計画しているイベント企画への課題図書という位置づけで、「就活エリートの迷走」(豊田義博・リクルートワークス研究所主任研究員著、ちくま新書)という本を読んでみました。90年初頭から現在までの就活の変遷が概説されていて、なかなか勉強になりました。

就活エリートの迷走 (ちくま新書) 就活エリートの迷走 (ちくま新書)
(2010/12/08)
豊田 義博

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何社もの内定を断ってその会社を選んだエリート学生を採っているはずなのに、その8割がローパフォーマーになっていしまうような事態が、いくつもの会社で続出しているというのです。その要因・背景を尋ねていくと、大きく分けて3つの傾向に分けられるとのこと。
①失敗を極度に恐れる
②自分の能力を棚に上げて、要求ばかりする
③自分が思い描いた成長ルートから外れると、モチベーションが急落する
就活エリートは、苦労の末にやりたいことを見つけて第一希望企業に受け入れられたという成功体験を獲得しても、入社後にアイデンティティを見失ってローパフォーマーとみなされてしまう。過度なゴール志向は、キャリアスタンスをゆがめている、というのです。
それでは、個人にとってはもちろん、企業にとってもダメージの大きいこのような状況を克服するにはどうすれば良いかを考えた「就活改革への提言」も、頷けるものばかりでした。中でも強調したいのは、次の5つのポイントです。
提言1:大学生に関する社会幻想をリセットしよう
大学が増えすぎた今、大卒とは社会人になる準備ができていることを最低限保証するという意味に。将来の人材をこうした層だけから採っていれば、企業競争力の観点から疑問符をつけざるを得ない。
提言2:採用活動・就職活動の時期を分散しよう
成熟社会に入って、生き方、暮らし方、学び方の多様性を大切にすべきステージに入ったいま、一つのルールやガイドラインを定めて全体がそれに従う、という考え方を改めなければならない。就職もその一つ。大学を卒業したらすぐに会社勤めをしなければならない、定職につけないような人は社会の落伍者であるという悪しき常識や社会通念はリセットすべき。
提言3:採用・就職経路を多様化しよう
利権による縁故ではなく、従業員や顧客、サプライヤーなど企業を良く知る人を媒介とした、紹介採用をもっと取り入れる。企業は文系でも大学教授との連携を深めながら学生と出会おう。大学教員の新たな教育評価の視点にもなる。
提言4:企業は求める人物像を多様化しよう
就活で勝ち上がってきがちな「明確なビジョンを掲げて立ち向かうリーダー」ばかりでなく、「地道な努力を重ねることができる人財」にもきちんと目を向けよ。
提言5:大卒のキャリアコース、選考過程のデザインを多様化させよう
次世代リーダー、専門職、地域限定職、定型・サポート職など、求める人材像に応じたキャリアコースを設ける。それぞれで選考方法を変える。選考過程では、エントリーシートと面接というある意味「作られた場」に依存することなく、大学での勉学成果や紹介情報なども含めてその人を多面的に評価できるようデザインする。
これらの改革提言を実りあるものにするためにも、大学での学びと職業が何らかの形で接続する仕組みの再構築が大学と企業の双方に求められる、と著者の豊田さんは言います。日本社会の大きな宿題である、とも。その通りだと思います。
私たちのプロジェクトは、「働き方が変われば社会が変わる」を掲げて歩み出しています。著者の豊田さんは、その入り口でもある就活が変われば社会が変わる、と主張しています。とても共感します。私たちのプロジェクトでも、まずは「就活」を取っ掛かりにキャリアをスタートにするに当たって必要な意識改革の観点を明らかにしようと考えているところです。どうぞご期待下さい!

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