ビジネスを育てる

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毎日暑い日が続いているのですが、今年は訳あって避暑には行けずじまい。そんな中で読んだのがこの本、「ビジネスを育てる」。ビジネス書というものをほとんど読まない私が、一見ビジネス書風に見える本を手にしたのは、この本がオルタナのようなスモールビジネスの起業に当たってとても参考になる、かつ勇気を与えてくれるものだからです。
中でも新鮮だったのが、スモールビジネスにとって常に悩みの種でもある「お金」についての考え方。だって、
「お金がありすぎることは、足りないより悪い」
と言うのですから。お金がありすぎると浪費するからかなあ、など何となく分かるような気がする反面、足りないのはやはりまずかろうと思うのです。それでも、筆者は足りないよりもありすぎるほうが悪い、と言います。
それはなぜか。簡単に言ってしまえば、お金で制約があるほうがスタッフの間から自然に新しいアイデアが生まれ、それが結果として顧客の共感を呼ぶことが多いからだという。筆者が創業した園芸用品会社スミス・アンド・ホーケンが、創業当時に商品カタログ制作にかけた費用は1万2000ドル。一方で、潤沢な資金を有して起業した筆者の友人のカタログ販売会社の商品カタログは、外注して8万2000ドルもかかったそうです。友人の会社がその後店じまいをしたのは、自分で学んで向上する絶好の機会のチャンスを手にしそこなったからだと筆者は指摘します。
自前で物事を進めることの大切さは、日々のオペレーションだけでなく、資金集めという経営の根幹に関わる部分でも同じだといいます。
酪農のさかんな米バーモント州で創業したアイスクリームのベン・アンド・ジェリー は、銀行からの融資やファンドからの投資に頼るのではなく、地元バーモント州の一般市民に対して株式を公募するという手段に出ました。弁護士や会計士といったいわゆる「プロ」の人たちからはことごとく反対されたようですが、ふたを開けてみれば募集株数は売り切れ。地域コミュニティが自社製品を応援してその企業が成長すれば地域にも貢献するはず、と市民は受け止めたのでしょう。
筆者のポール・ホーケン氏は、自然食品店に始まってIT関連会社まで創業した豊富な起業経験を持つ。起業を考えている、あるいは既に運営している業種に当てはまらなくても、環境や地域に良いインパクトを与えるスモールビジネスを目指すのであれば、必ず響くメッセージを見つけられる本だと思います。

ビジネスを育てる ビジネスを育てる
(2005/04/02)
ポール・ホーケン

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