3.11後のオーガニックの行方
日本の有機農業・食品業界関係者でつくるオーガニック・マーケティング協議会がこのほど、有機農業、有機食品に関する総合調査「日本におけるオーガニック・マーケット調査(OMR)2010-2011」を公表する報告会「とことんオーガニックシンポジウム2011」を開催。取材に伺いました。
日本の有機食品市場、1400億円規模(Yahoo!ニュース)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110610-00000308-alterna-bus_all
日本の有機食品市場規模が1300ー1400億円(推計)ということが今回、初めて明らかになりました。一方、世界では欧州(184億ユーロ)を抜いて米国(266億ドル)が初めて世界トップとなっています(国際有機農業運動連盟IFOAM調べ、2009年)。私はドイツ、アメリカ在住時にオーガニックのことをたびたび取材していたのですが、当時はこの手の市場調査が日本にはなかったので、比較のしようがなくて困ったものでした。現状をきちんと把握しないと、問題への対策は打てないはず。日本でオーガニックが社会システムとして普及しなかった原因は、こんなところにもあったような気がしてなりません。
欧州では、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故をきっかけに、環境保全と安全な食を求める声がオーガニックという形で結実し、EUや各国政府による後押しもあって広がっていきました。それを見ていたアメリカが、オーガニックの意義を認めて市場の力で拡大させていきました。
翻って日本では、東電原発事故に伴う放射能汚染の影響が続く中ではオーガニックどころではない、という声も聞かれます。しかし、私は今このタイミングが日本でのオーガニック普及のラストチャンスではないかと思うのです。
これまでのオーガニックは、「健康的みたい!」といったファッションとしての営みでも良かったかもしれません。でも、これからのオーガニックは自然や人の健康を大切にする価値観としての営みになっていかなければならないはず。これは、ひとたび事故が起きれば自然にも人の健康にも取り返しのつかない影響を及ぼす原発とは対極にある、自然エネルギーとも通じ合う考え方ではないでしょうか。
シンポジウムでは、OMR協議会代表の徳江倫明さんが「原発事故で汚染された土壌改良には、有機農業での微生物の働きが貢献できる。原発の向こう側にある価値観と、オーガニックが育んできた価値観は一致する」と発言されていました。その通りだと思いました。海外にオーガニック日本酒を輸出する、金沢市の有機農家・井村辰二郎さんは「今までは米国産の有機大豆か国産大豆かどちらを選べば良いか聞かれたら、迷わず国産と答えてきた。でも、今日からは有機と言う。有機は地域の営みだけど、世界に対する責任でもある」と力強くおっしゃっていました。ポスト3.11の一つの見識だと思いました。
幸い、OMRの調査では、新規就農希望者の間で有機農業に対する関心が広がっていることが伺える結果が出ました。生産者はオーガニックをやってみたい。あとは、あらゆる主体が声を上げてオーガニックを求め、積極的に買い支えて行くことが必要。これまた、自然エネルギーと同じです。
OMRプロジェクト
http://www.omr2009.com/