アメリカってこんなだったっけ?

アメリカってこんなだったっけ?

アメリカってこんなだったっけ?

 持続可能な地球環境の実現を目指す各種ビジネス企業が一同に会して年1回開かれるLOHASコンファレンスの取材のため、5月中旬に約1週間ロサンゼルスに滞在した。また時折肌寒くなるミュンヘンから、太陽がサンサンと降り注ぐカリフォルニアに行くという訳で、これはワクワクせずにはいられない!スーツケースに水着もちゃっかり忍ばせて、約9年ぶりのアメリカに足を踏み入れた。
 ところが、だ。最近すっかり「サステナビリティ」絡みの取材にのめり込み、しかもそのお陰といった感じでドイツに住むようになり、そこから出かけて行ったせいだろうか、今回はサステナビリティからは程遠いアメリカの側面がやけに目に付いてしまい、ワクワク感はどこかに吹き飛んでしまった。例えば…。
 ドイツのルフトハンザ航空では、食事の飲み物としてワインを注文すると、スチュワーデスは750mlのワイン瓶からコップに注いで渡してくれる。おかわりする時は、種類が同じなら同じコップに入れてくれる。ところが、今回乗った某米系航空会社では、スチュワーデスはコンビニで売られているような小瓶とコップを渡して、はい、おしまい。同じ瓶とはいえ、後で出るゴミの量を考えると-。気のせいか、ワインが不味く感じる。
 「アメリカンサイズ」という言葉が示す通り、アメリカでは1回の注文で出てくる食事の量が何かにつけて多い(まあ、この辺はドイツも似たり寄ったりだけど)。これを全部食べるから肥満が社会問題化するのは当たり前なのだが、中には食べられない人だっている。すると、やはり残った分は捨てるしかない。でも、捨て方ってものがあるだろう。今回の滞在中、セルフサービスのお店や空港のロビーといった場所では、必ずと言っていいほど、食べかすや容器などが散乱していたのを目にした。辺り一面、散らかった子ども部屋か何かのよう。あれ? アメリカってこんなでしたっけ?
 海岸沿いのマリナ・デル・レイにあるコンファレンス会場のホテルから、タクシーで高速道路に乗ってダウンタウンLAに行く機会があった。走っているうちに高層ビル群がうっすらと浮かんでは見えてくるのだが、かなり近くまで行かないとはっきり見えてこない。車の排気ガスが立ち昇り、最近は晴れていても霧がかっていることが多いそうだ。確かに、10年以上前にUCLAのサマーセッションで滞在していた時はこんな感じではなかった。どうしたことか。しかし、コンファレンスでスピーチしたカリフォルニア州環境保護局長官の言葉でピンと来た。
「カリフォルニア州では今、人口約3000万人が1987年当時よりも燃費の悪い車で渋滞によって年々平均速度が落ちている高速道路をのろのろと走り、CO2やNOXを撒き散らしているような状態だ」
「こんなだったっけ?」と思わせる事実がやはりあったんですね。
 何も考えずにワインの小瓶を出す航空会社も、食べ散らかして知らんふりの人々も、スモッグで曇るダウンタウンLAの風景も、全てはたくさん作ってたくさん捨てることを繰り返す社会システムの落とし子だ。このシステムを反省し、サステイナブルな地球環境のために生活やビジネスのあり方を変えていこうよ、というのが、アメリカ生まれのLOHASのモットー。でも、LOHASがアメリカに根付くまでの道のりは、かなり厳しいと実感させられた。

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