身近になったフェアトレードコーヒー
フェアトレードで輸入されたコーヒーが、スーパーやコーヒーショップで手軽に買ったり飲んだりできるようになってきました。これまでは少量しか取り扱っていなかった卸売業者らの間で「フェアトレードコーヒー=売れる製品」との認識が除々に広がっています。
国際コーヒー価格の低迷で苦境に立たされている開発途上国のコーヒー農家の経済的自立を支援する目的で、消費国によって長期契約に基づき市場価格を上回る水準で輸入されるフェアトレードコーヒー。これまでは、環境破壊や途上国の貧困格差などの問題に対して高い意識を持った消費者層が自ら進んで買わなければならない製品としてのイメージが強かったが、最近ではスーパーやコーヒーショップで手軽に買ったり飲んだりできるようになってきた。自らの「社会的責任」として少量を輸入していた卸売業者らの間でも、「フェアトレードコーヒー=売れる製品」との認識が除々に広がってきた。
フェアトレードコーヒーでは、生産者が安心して高品質な製品を生産し続けられるよう、国際的な認証機関によって最低保証価格が決められている。代表的な中米・アフリカ産アラビカ種の最低保証価格は、市場価格を0.05ドル上回る1ポンド=1.26ドルとなっている。
フェアトレードコーヒーを買うことは、地球環境への負荷が少ない持続可能な栽培方法を支援する意味合いも含まれる。世界の認証オーガニックコーヒーの40~50%はフェアトレード認証機関のリストに登録されている生産者組合によって生産されているほか、80%以上の農家が農薬をほとんど、または全く使用していないとされている。フェアトレード認証の有機コーヒーになると、最低保証価格は同1.41ドルに上昇する。
フェアトレードコーヒーの輸入量がコーヒー全体の1%にも満たない米国でも、コーヒーチェーン大手スターバックスが2000年10月に米国の全店舗で有機無農薬のフェアトレードコーヒーの販売を始め、話題となった。また、ここにきてフェアトレードコーヒーを取り扱う店がさらに拡大しているようだ。
ロイター通信によると、ニューヨーク・ユニオンスクエアにあるジャズ喫茶のオーナー、デービッド・レビー氏は「うちの店でも、2、3週間以内に80~90%をフェアトレードコーヒーにするつもりだ」と語った。ニューヨークでは、フェアトレードコーヒーを買えるスーパーマーケットも登場している。
ブルックリンの卸売業者コーヒー・ホールディング・カンパニーの担当者は「3年前にはたった1種類のフェアトレードコーヒーしか販売していなかったが、今では6種類取り扱うようになった」と述べた上で、「フェアトレードコーヒーを求める人々が多くなっているし、品質も伴ってきた」と付け加えた。
日本でも、フェアトレードコーヒーの認知度を高めようと、関係者の間で熱心な取り組みが続いている。スローウォーターカフェ(本社東京都府中市)では、開墾畑ではなく多様な熱帯雨林の植生の中で栽培されたエクアドル産の有機無農薬フェアトレードコーヒーを販売している。オープンを目指しているカフェでも、このコーヒーを目玉商品にする考えだ。国際支援NGOピースウィンズ・ジャパン(本部東京都世田谷区)は、支援対象国産のフェアトレードコーヒーを大手スーパー系のレストランに卸し始めた。
さらに、国会や省庁、大学生協などに対してフェアトレードコーヒーの調達を働きかけることも、関係者の間で検討されているという。
こうしてフェアトレードコーヒーが様々な場で愛飲され、いずれフェアトレードコーヒーとわざわざ言わなくてもいい日が来ることを願いたい。
(2003年8月掲載)