ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

LOHASメディアの夜明け

LOHAS という言葉が聞かれるようになるにつれ、有機食品やヨガ、代替医療などLOHASに関わるテーマを情報として伝える雑誌を中心とした”LOHASメディア“が、日本でも急速に増えている。

硬派から軟派まで続々登場

日本のLOHASメディアの先駆者と言えば、「地球と人をながもちさせるエコ・マガジン」を掲げたソトコト(月刊)だろう。99年の創刊以来、世界各地の多様な食を守り、それらを生産する小規模農家を支援する活動などで知られるスローフード運動を積極的に取り上げながらLOHASにたどり着いた。05年7月号からは「ロハスピープルのための快適生活マガジン」に衣替えし、これまで以上に幅広くLOHASに関するテーマを取り上げていく意気込みのようだ。

日経BP発行のエコマム(季刊)は、「はじめよう、家族と自然にやさしい暮らし」をキャッチフレーズに、家族の食生活や健康に高い関心を持つ主婦をターゲットとした無料マガジン。同誌は、読者には送料も含めて無料とする一方で、広告主の企業には無料登録する読者を対象に新製品開発のマーケティング調査などを行える機会を提供する仕組みを取っている。05年3月に創刊したばかりだが、約5万人もの登録読者を持つまでになっている。

硬派な部類で言えば、「市民、自治体、NPO、学生、企業のための環境コミュニケーション」をうたう宣伝会議発行の環境会議(年2回発行)。企業や行政の環境政策に関わる幅広いテーマについて、それぞれの分野の専門家たちが寄稿したものが集められている。

これらの雑誌が主に企業の社会的責任(CSR)に敏感な大企業からの広告収入で成り立っているマスメディアであるのに対して、LOHASなどと言われ出す以前からサステナビリティを意識して事業を展開してきたビジネスや活動を積極的に紹介する小粒ながらも質の高い媒体もある。

例えば、アイシスラテール(季刊)は、自然素材の化粧品やオーガニックな食材に関する話題を軸にサステイナブルなライフスタイルの必要性を訴えている。大量の返品が生じる書店売りはサステイナブルを標榜する雑誌としてふさわしくないという信念から、定期購読とサイトからの注文に限定して約2万部を販売している。また、PC関連雑誌などで知られる技術評論社が05年2月に創刊したdomingo(季刊)には、LOHASビジネスやライフスタイルに共感する若手ライターらが集まるスローメディアワークス(SMW)が編集に参画し、衣食だけに限らない幅広いLOHASな動きを紹介している(domingoは現在休刊中)。LOHASという言葉がもてはやされる以前からエコロジーやサステナビリティに関心を持って実践してきた人々にとっては、これらのほうがマス媒体よりも信頼度が高いようだ。

この他LOHASを意識したメディアとしては、マガジンハウスのku:neru(クウネル)、ソニーマガジンズのリンカラン、その名もずばりMy LOHAS、LOHASに関連する商品を数多く取り上げていると銘打たれたリクルート発行の通販雑誌eyecoなどがある。

脚光浴びる米国のLOHASメディア

LOHASという言葉が生まれた米国では、 LOHASメディアの数もバラエティも日本のそれとは比べものにならない。古いものでは80年代に発刊し、LOHASへの関心の高まりに乗じて一段と脚光を浴びている雑誌も数多い。

84年創刊の雑誌Utne(隔月、公称22万5000部)は、環境の持続可能性や多様性のある社会のあり方に敏感な米国のリベラル層で知らない人はいないというほどのバイブル的な存在だ。全米約500人の図書館司書の協力を得ながら、マスメディアに乗らない良質な記事や著作をチェックし、これらをヒントに立てる独自のテーマで読者を引きつける。

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LOHASメディアの数々。ページをめくると、オーガニック食品やナチュラルコスメ、自然エネルギー、社会的責任投資(SRI)ファンド会社など、LOHASビジネスのカラフルな広告が目につく。LOHASメディアは、記事はもちろん広告もLOHASだ。

テーマを食や健康に限定した専門誌となると、Natural HealthBody & SoulYoga JournalAlternative Medicineなど、挙げればきりがない。最近も、Plentyなど新創刊のLOHASメディアが続々と登場している。LOHASメディアの台頭を受けて、“カリスマ主婦”として知られるマーサ・スチュワート氏率いるマーサ・スチュワート・リビング・オムニメディアが、LOHASメディアの一角であるBody&Soul を発行する企業を04年8月に買収するなど、大手のメディア会社がLOHASメディアを傘下に入れる動きも出始めている。

LOHASへの注目度が高まる中、今後しばらくは日本でもLOHASメディアが増え続け、LOHASに関連するビジネスを展開する企業にとって有力な媒体となる可能性がある。一方で、紹介する商品が本当に地球環境や働く人の人権に配慮して作られたものなのか、掲載する広告主の企業はCSRに積極的に取り組んでいるか、などをきちんとチェックする媒体側の真剣さが読者によって見抜かれるようになると、自然に淘汰されていくはずだ。

重要度増す商品テスト誌の役割

もう一つ、持続可能な社会への道筋を考える上でのメディアの役割として、商品テスト誌の重要性を無視する訳にはいかないだろう。

ドイツの商品テスト誌oekotest(エコテスト)は、市場にあふれるほとんどありとあらゆるモノを対象に、地球環境と人間の健康に害悪を与えていないかという観点で成分や機能を分析し、その結果を誌面で公表している。月刊誌に加えて、1000以上に及ぶモノのテスト結果が掲載された年鑑は、発刊から20年余を経て、ドイツのみならずオーストリアやスイスなどのドイツ語圏を中心とした読者に絶大な信頼を得ている。一方、企業は好評価を得た製品に同誌の評価マークを付けて売り出したり、テレビCMでもさかんにPRしたりしていて、同誌の評価が企業にとっては一種のブランドにもなっている。

日本にも、暮らしの手帖や、食品と暮らしの安全たしかな目月刊消費者通販生活など、商品テストを重要な企画の柱としている媒体はある。しかし、メーカーも一目置き、消費者にも広く信頼される“お目付役”のような本格的な商品テスト誌が購買行動を左右するような影響力を持つまでには、まだ時間がかかるのかもしれない。

(2006年1月掲載)

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テーマ: メディア