観光立国を目指すというけれど

観光立国を目指すというけれど

観光立国を目指すというけれど

昨日から旭川に来ています。久しぶりに気温マイナス10度以下を体感、さむっ(ブルブル)。
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再エネ地域人材育成事業「まちエネ大学」の仕事を中心に、今年も幾度となく首都圏以外の地域を訪れました。仕事なのでなかなかゆっくり観光とはいきませんが、私が好きになる地域には、以下のような傾向があるなあと実感しています。

 

1、美味しい食べ物(素材を活かした地物料理)と美味しいお酒(地酒、地ワイン、地ビール)があること

 

2、(お店でも宿でも)地元のウンチク話をしていただけるご主人やマスター、ママさんのお話が聞けること
→ただし、あまりしゃべられ過ぎると疲れてしまうので、適度に放っておいていただける間合いが有難い

 

3、地元の人たちの営みに近い場所が魅力的であること
→温泉とか市場とかカフェとか

 

逆に、これらのうちどれかがその地域に欠けている、あるいはその地域に全部ないとなると、「何かが足りない」魅力薄な地域に映ってしまいます。出張ではなく自分でももう一度来たい、とは思えなくなってしまうのです。

 

師走の出張移動中に読んだ観光立国の正体 (新潮新書)は、日本全国(最近では海外にも行っていらっしゃるとか)をまわって地域経済を定点観測されている藻谷浩介さんの最新作。今回は、内閣府の観光カリスマとして全国各地で地域ぐるみの観光活性化をコンサルする山田桂一郎さんによる論考と、お二人による対談で構成されています。昨今のインバウンドの流入や4年後の東京オリンピックといった一時的な需要だけに頼らずに、日本が観光で食べていく国になるために今何をすべきか――というテーマに正面から挑んだ作品です。

 

観光立国の正体 (新潮新書)
藻谷 浩介 / 山田 桂一郎
新潮社
売り上げランキング: 572

 

「地域の人がまだ気づいていないだけで地域に根差した魅力ある「宝」は、各地でまだまだ眠っている。まずはそれらを丁寧に掘り起こして、価値をしっかり見直し、住民がそこに誇りを持つことが大切。そして、多様な事業者が連携することで地域の宝を『今だけ、ここだけ、あなただけ』の商品・サービスとして生かすことが出来れば、海外からの旅行者を惹きつけることができる地域になることは不可能ではありません」(130ページ)

 

この「多様な事業者が連携する」というのが言うは易しで実際には大変、ということは、地域の住民、事業者、行政、金融機関が一堂に会して再エネ事業を考案してもらっているまちエネ大学での経験からもよく分かります。この本でも、スイスの住民による地域経営組織「ブルガーゲマインデ」を手本にした、行政が主役ではなく住民主体で行政がサポートする形で運営する地域住民組織をつくって、そこが母体となって民間の力で地域観光事業を進めていくべきだ―と説いています。

 

至極まっとうですし、王道ですし、正論だと思いました。持続可能な地域づくりは、外部から入ってきた企業だけが利益を得ておわりではなく、地域全体が潤って初めて実現すること。「急がばまわれ」なのです。

 

「観光立国の正体」は、まだまだ続く地方創生の方向性を間違えないようにするためにも、むしろ観光関係者以外の皆さんに読んでいただくことをおススメしたいです。

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