<著者インタビュー>わが家のエネルギー自給作戦(枝廣淳子著)

<著者インタビュー>わが家のエネルギー自給作戦(枝廣淳子著)

<著者インタビュー>わが家のエネルギー自給作戦(枝廣淳子著)

POCO21リニューアル号インタビュー「この人が語る」にご登場いただいた、環境ジャーナリスト・翻訳家の枝廣淳子さん。私がお仲間に入れさせていただいている環境ビジネスウィメンでもお世話になっている枝廣さんがこのほど、新著『わが家のエネルギー自給作戦』(エネルギーフォーラム新書)を上梓しました。本誌でご紹介しきれなかった新著の内容を、枝廣さんへのインタビューでご紹介をします。

わが家のエネルギー自給作戦 (エネルギーフォーラム新書) わが家のエネルギー自給作戦 (エネルギーフォーラム新書)
(2012/04)
枝廣 淳子

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――新著では、エネルギー自立型の暮らしに向けてどのように移行していけるのかを「ホップステップ ジャンプ」と3段階で考えてみようと提唱しています。
枝廣さん:「(どのぐらい電気を使っているのか)現状を知り」「使う電気を減らし」「最低限必要なエネルギーをどのようにして得るか考える」という3つです。日本全体のエネルギーと言うと、量も莫大ですし、「自分一人が考えたり変えたりしたって…」と思いがちです。けれども、自分の家のエネルギーだったら、どれぐらい使うか、何でそのエネルギーをつくるか、という部分は変えられます。今、変えるための技術は、ソーラーパネルも含めて色々なものが出てきています。日本全体のエネルギーを変えるのは、最終的な目的ではありますが、やはりまずは自分の家から変えてみましょう、と。そのほうがずっと早いし、楽しいし、安心・安全な暮らしにもつながると思うんですよね。
これは前から言っているのですが、日本のエネルギー全体で考えるから難しいのであって、私は産業用と家庭用で分けるべきだと思っています。
――その視点はすごくユニークだと思いました。
枝廣さん:日本のエネルギー自給率は4%しかないと言いますが、家庭用は産業用と必要な要素が違います。家庭用は規模も小さいし、変えようと思ったら変えられると思います。環境省のデータでは、2050年には日本の家庭は省エネ技術・断熱ともに発達して、エネルギー消費量が半分になります。半分になったものであれば、ソーラーパネルで十分賄えるので、家庭でエネルギーの自立ができる。CO2フリーになるということなのです。
産業用として使う電力は大量に必要なので、なかなかソーラーパネルだけでは無理かもしれません。今、それを一緒にして話しているのです。産業用として使う電力は大量に必要なので、なかなかソーラーパネルだけでは無理かもしれません。今、それを一緒にして話をしているのです。産業界では、産業用として、もしかしたら当面、大規模な発電所が必要かもしれません。けれども、私たちにはそれは必要ありませんので「私たちは外してください」と言えますよね。
 エネルギー消費量の半分ぐらいが民生ですので、半分が外れただけでも、だいぶ原発の必要性も減るわけです。このように、全体を変えようと思うと大変ですが、小さい部分は変えられるのではないでしょうか。それが「自分の足で立つ」「自分の家のエネルギーは自分で考えてやっていく」ということだと思います。
最後の部分で、大切なのは「自立とつながり」だと書きました。自分だけで立とうと思うと辛いですが、緩やかに周りとつながっていれば、昔、醤油や味噌を貸し借りしたように「ちょっと電気貸して」と、そんなことができればいいなと思います。今、制度上ではできませんが、技術的には可能になってきています。
 そんな社会が実現すると、地域としてしなやかな強さを持てると思います。国全体と思うと、やはりすごく大変だし時間がかかりますよね。もう一つの危機感は、国全体が変わるまで待てない、ということです。原油価格の値上がり、温暖化の問題、もしくはもう一度原発事故が起こる可能性もゼロとはだれもいえないでしょう。国が動くのを待たずに、例えば「原油の輸送に重要な役割を果たしている中東のホルムズ海峡に何か起こって、石油の輸入がとだえたとしても、わが家や周りでは幸せで安全・安心な暮らしを送れます」と言えたらいいなと思います。ある意味、自衛になりますよね。
――自給することで自衛する。
枝廣さん:そうですね。これは、主体性を取り戻すことだとも思います。もともとそうだったはずですが、ある時から分業のほうが効率が良いと言って、いろいろなものを外に任せてきました。「エネルギーは電力会社に」、といったようにですね。それを取り戻すことだと思います。
――主体性を取り戻すことで、幸せや満足感を感じるようになる。
枝廣さん:「ちょっと電力を貸してよ」というやりとりをしているほうが、ずっと幸せな地域だと思います。それはエネルギーが目的ではなくて、幸せで安全で安心できる、何かあってもしなやかに立ち直れるということを目指した暮らし方です。そういうことができる暮らしや地域をつくる。そのときに相応しいエネルギーって何だろう、エネルギーのつくり方・使い方って何だろうと考えてみることが大事です。
 今はシンデレラの靴に合わせて足を削っているような気がしてなりません。そうではなくて、「足」に合わせて「靴」をつくればいい。エネルギーは「靴」なのです。私たちの暮らしや幸せというのがまずあって、それを支えるエネルギーのあり方があるはずです。それは、中央集権型なのか、地方分権型なのか、選択できるのか、できないのかといった、エネルギーシステムのあり方を含めてのことになるでしょう。
 その「靴」を、「足」に合わせて設計したい。繰り返しになりますが、それを国に任せていると時間がかかるので、できるところでやりましょう。そのほうがずっと楽しいし、幸せではないでしょうか。

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