ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

「内なる声」を聞いて行動する

 もう2カ月以上前になってしまいましたが、企業や非営利組織の中堅幹部へのリーダーシップ教育を手掛けるNPO法人アイ・エス・エル を設立、理事長を務める野田智義さんの講演を伺う機会がありました。
 世の中が停滞したり過渡期を迎えたりすると、いつもリーダーシップの重要性が叫ばれます。今もまさに、そういう時期でしょう。過去や常識にとらわれずに、白いキャンパスに明日を描き、その実現に向けて周囲に働きかけ、巻き込み、成し遂げる。国家や組織がその存在意義を世の中に問い、持続的に成長を続けていく上で、リーダーシップは不可欠です。
 とはいえ、私たち日本人の多くにとって、リーダーシップはあまり身近なものではないのではないでしょうか。むしろ、個性の強いカリスマ的なリーダーと言われる人たちに対して嫌悪感を抱いたり、リーダーシップなんて自分には縁がないと思っている人が多いように見受けられます。私もこれまでは、似たような感覚を持っていました。俗にリーダーと見なされている人たちって、おおにして人間的な資質に問題があったりしますし(笑)。しかし、野田さんのお話を聞いて、考えを改めました。
 野田さんは、リーダーシップとは一部の人たちに限られたテーマでは決してなく、「すべての人に与えられたもの」であると説きます。米公民権運動の指導者であるキング牧師や、インドで貧者の救済に生涯を捧げたマザー・テレサの映像を交えながら、リーダーシップの本質を分かりやすく伝えてくれます。2人に共通するのは、最初から凄いリーダーではなかったということ。 2人は、黒人差別や貧困が放置される社会に対して、それぞれ「何かおかしい」と感じて行動したというのです。
 「何かおかしい」というのは、その人にしか感じられないものです。皆さんだってきっと、今までに一度は感じたことがあるはずです。野田さんはこれを「内なる声」と表現し、 リーダーシップとは「『内なる声』を聴きながら、自分として生きようと決めることから始まる」と主張します。
 野田さんのリーダーシップの考え方でユニークなのは、リーダーシップを「旅」になぞらえている点です。
 リーダーシップと言うと、私たちはとかく「他人をぐいぐい引っ張る(リードする)こと」と捉えがちです。しかし、野田さんは「リーダーシップとは、自分をリードする(lead the self)旅」だと定義づけます。さらに「自分の夢をより大きな文脈で実現させるには、リーダーはある時点で『利己』から『利他』に変わらなければならない」と言います。リーダーは、自分の夢を「みんなの夢」に昇華させる能力を問われるということでしょう。
  山積する社会問題を前に、私たちの多くが何となくながらも「何かおかしい」と感じているのではないでしょうか。だとすれば、あとは行動あるのみ。野田さんのお話を伺いながら、それぞれの立場でリーダーシップの旅を始める人を増やすことが、日本を変える唯一の方策ではないかという思いを新たにした次第でした。
 野田さんのご著書「リーダーシップの旅 見えないものを見る」(光文社新書)。社会起業家を目指す皆さんはもちろんですが、所属する組織で何か変革を起こしたいと考えている全てのビジネスパーソンにおすすめできます!
 

リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書) リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)
(2007/02/16)
野田 智義金井 壽宏

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