医者の”海外流出”という問題

医者の”海外流出”という問題

医者の”海外流出”という問題

 日本ではほとんど話題になっていませんでしたが、今年3月半ばからドイツ全域で断続的に行われていた医師のストライキが先日、ようやく終わりました。医師のストなんて日本じゃあり得ませんから(看護士さんはたまにあるでしょうか)、白衣姿のお医者さんたちが「患者は治っても医者が死ぬ!」などと書かれたプラカードを掲げて笛をブーブー吹きながらデモ行進している光景にはびっくり!でも、そうまでしなければならないほど、ドイツの医師の労働環境は年々悪くなっているようです。
uni klinik

ミュンヘン大学病院に貼られていた「スト中!」のポスター(2006年3月18日撮影)
 今回ストをしていたのは開業医ではなく、大学病院や自治体病院のいわゆる勤務医の皆さん。医学部を出たばかりの若いお医者さんが相対的に多いのですが、救急・当直といった激しい勤務の割には収入が低い。まあこれは、日本でも似たり寄ったりです。とはいえ、日本のお医者さんにとっては、劣悪な勤務を逃れて新天地を求めて外国に行く、なんてことは言葉の問題もあってなかなかできません。
 ところが、ドイツではこれが簡単にできてしまうんですね。お隣のオーストリアやスイスに行けば、同じドイツ語が使えるし、おまけに税金も安い(おまけどころか、これも大きな要因です)。はるばるイギリスやアメリカにまで出て行く人もいて、若くて有能な医師の”海外流出”は後を絶たないんだそうです。
 自治体病院、そして一足先にストを収拾した大学病院の医師たちは、いずれも一応の賃上げを確保しました。それでも、今回の結果が医師の海外流出に歯止めを掛けるという見方はほとんどなし。果たして手だてはあるのか-。この問題、これからも尾を引きそうな気がします。

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