ジャーナリスト/コミュニティ・プロデューサー
木村麻紀 公式ウェブサイト

ドイツはスイスの属州!? 

 ワールドカップも終わっていよいよバカンスシーズン本番!という訳で、先日までお隣のスイスを旅しておりました。最初は、長野での記者時代にお世話になった全国紙記者のご夫妻と、グリンデルワルトという村を拠点に、アイガーやユングフラウヨッホといったスイスアルプスお決まりのエリアをハイキング。スイスはアルプスを抱える北部と中部がドイツ語圏なので、ドイツから行くと「ああ、何だかいつもと同じ」となってしまいがちなのですが、滞在しているうちにドイツとの微妙だけど確実な「違い」に驚きました。それは…。
肉と乳製品がドイツよりおいしい!
 そうなんです。アルプスハイキングの拠点、グリンデルワルトのスーパー「coop」(コープ、生協です)でハイキング中のお弁当にと早速買ったハムとチーズがまず美味しかった。coopのオーガニックブランド「Natura Plan」はもちろんのこと、普通の製品もドイツのそこらのスーパーの製品よりも旨いんです。肉や乳の味がしっかりとする。水っぽくないんですね。原料の品質が良い上に、水で薄めたりといったごまかしをせずにきちんと加工されているからでしょう。何でも、スイスは農地の9割以上が環境関連法制、もしくは有機農業基準を満たしているのだとか。どおりで、肉も乳製品もおいしいはずです。
coop

コープのオーガニックブランドのPRポスター
alpenhof

グリンデルワルトにあるレストランAlpenhofは、地元産の食材を使った料理を出す”地産地消レストラン”。スイスはブロイラーが禁止されているので、鶏肉は言ってみればすべて地鶏。もちろん美味しかったですよ。
せっかくなので、アルプスの写真も1枚。
hiking

 数日後、ご夫妻とお別れしてミュンヘンから来る夫と待ち合わせるため、列車で一路東部の街クールへ。スイス観光の名物として余りにも有名な氷河特急の路線を逆コースをたどりながら普通列車で移動していると(それでも車窓の景色は氷河特急とまるで同じ)、一人でボーッとしている東洋人旅行客の私を気遣ってか、初老の男性が話しかけてきました。
 この人、愛する母国スイスを旅行者の私にもぜひ好きになってもらいたいようで、車窓から見える氷河を頂く山々や田園風景を逐一指差しながら説明してくれます。「スイスはどうか」と聞かれたので、「天気が良かったので、山々の景色が素晴らしかった」と答えると、「そう、あなたは今世界で一番美しい場所にいるのです!この美しい景色を守っているのは私たち!!」とのたまう。自分たちの税金が農家への補助金となり、山間部の景観保護につながっているのを誇りに思っているんですね。
 で、この後がびっくり。「なぜドイツ語が分かるの?」と聞かれたので(ドイツでもスイスでも、東洋人=ドイツ語が分からないはず、と思っている人は多い)、ミュンヘンに住んでいるからだと答えると、彼はニヤリとしながら「ああ、ドイツから来たの~(と、ちょっとさげすんだ感じに)。ドイツは”スイスの大きなカントン(州)”だよ。スイスのほうが優れている」と自信たっぷりに言うのです。これ、ドイツ人観光客に直接言ったら間違いなく喧嘩になりますが、私がドイツ人ではないからつい本音が出たんでしょうね。見下していたのは私ではなくドイツ。そうか、スイス人はドイツのことを属国ならぬ属州ぐらいに思っているのか~。
 でもこれ、分かる気がするのです。
 スイスもドイツも同じ連邦制ですが、スイスはカントンのさらに下の市町村単位で税制まで違うぐらい地方の裁量があります。行政単位が小さいと市民も地域の変化に敏感になるので、例えば自然環境を守るための厳しい規制が保たれることになる。様々な面で規制が緩くなりがちなEUに入っている国々より、自分たちのほうが優れていると思うのも不思議ではありません。もっとも、こういう優越感は簡単に差別意識にもつながるので要注意ですけどね。
 初めてのスイス旅行ということで、私もご多分に漏れずアルプスの少女ハイジに出てくる美しい山並みだけを想像して出掛けた訳ですが、ドイツから行ったお陰で日本から行くのとは一味違ったスイス&スイス人観察ができたのでした。